Amazon Web Services(以降、AWS)は、企業のクラウド移行で広く採用されている代表的なクラウドサービスです。DXを推進する上でも、クラウド環境への移行は不可欠といえるでしょう。しかし、専門知識や人的リソースの不足から、自社だけで移行を進めることが難しいケースも少なくありません。そこで活用できるのが、AWSの移行を支援するツールやプログラム、または移行支援サービス事業者のサポートです。
本記事では、AWSへの移行を成功させるために役立つ、代表的なツールやプログラムを紹介します。併せて、移行支援サービス事業者に依頼するメリットや、依頼する際の選定ポイントなども紹介するので、利用を検討する際の参考にしてください。
AWSが提供している移行支援ツール・プログラム

AWSでは、クラウド移行を効率化するための公式ツールや支援プログラムが多数用意されています。ここでは、代表的なツールの概要を解説するので、移行作業を始める前に確認しておきましょう。
全体管理|AWS Migration Hub
AWS Migration Hubは、複数の移行プロジェクトを一元管理できるサービスで、アプリケーションやサーバーの移行状況をダッシュボードで可視化できます。
AWS Application Migration Service(以降、AWS MGN)やAWS Database Migration Service(以降、AWS DMS)と統合することで、移行の進捗をまとめて確認できる点が特長です。
移行対象となるリソースの情報収集や分析は、AWS Application Discovery Service(以降、AWS ADS)やMigration Hub Strategy Recommendationsなどの別ツールを用いることで行えます。これにより、現状の環境の依存関係や移行に必要なコスト、期間の見積りなどに活用することが可能です。
なお、2025年11月7日以降、新規顧客の利用受付が終了しています。移行管理基盤を導入する場合は、後継となるAWS Transformを導入することで同様の機能を備えることが可能です。

サーバー移行|AWS MGN
AWS MGNは、オンプレミスサーバーをAWS上へ継続的にレプリケーションできるサービスです。「Rehost」手法に対応しており、アプリケーションを大きく改修せず移行させられるため、作業期間の短縮が期待できます。
また、移行前にAWS上でテスト環境を構築できるため、切り替え時のダウンタイムを抑えられる点もメリットといえるでしょう。
なお、レプリケーションは継続的に実行されるため、最新状態での切り替えが可能です。

データベース移行|AWS DMS
AWS DMSは、異なるデータベース間の移行を容易にするマネージドサービスです。オンプレミスからAmazon Relational Database ServiceやAmazon Auroraへの移行をサポートすることで、ダウンタイムを抑えながら作業を進めることができます。
また、AWS Schema Conversion Toolを併用することで、スキーマ変換を自動化し、異種データベース間の移行を効率化することも可能です。
データ移行|AWS DataSync
AWS DataSyncは、オンプレミスのファイルサーバー(NFS1、SMB2)やオブジェクトストレージと、AWSストレージサービス3間で、データを高速かつ安全に転送・同期できるサービスです。
独自の転送エージェントによって、従来の転送方法よりも最大10倍の速度で移行できるほか、暗号化や整合性チェックにも対応しています。
また、バックアップやアーカイブデータの移行にも利用可能で、安全かつ効率的なデータ転送を実現します。
- NFS:ネットワークファイルシステム ↩︎
- SMB:サーバーメッセージブロック ↩︎
- AWSストレージサービス:Amazon Simple Storage Service、Amazon Elastic File System、Amazon FSxなど ↩︎
AWSの移行支援サービス事業者を利用するメリット
AWSへの移行にあたっては、AWSの公式ツールを活用するだけでなく、クラウド移行に精通した移行支援サービス事業者を利用することで、移行の成功率が大幅に高まります。この章では、AWS移行支援サービス事業者を利用するメリットを4つ紹介します。
コストの最適化を実現できる
クラウド移行により、オンプレミス環境で生じていたハードウェア保守やサーバー設備費用を削減することが可能です。AWS認定のパートナー企業(以降、AWSパートナー)に移行を依頼することで、利用状況に応じた従量課金モデルの最適化や、不要なリソースの削減などを提案してもらうことも期待できるでしょう。

さらに、移行後も継続的に運用・監視を行い、費用が増大する要因を分析しながら改善を支援してくれるケースもあります。
専門知識がなくても適切な対策を講じられる
AWSパートナーには、クラウド移行・設計・運用に精通したエンジニアが在籍しており、企業の要件に合わせた構成を提案できる点が強みです。AWS移行では、ネットワーク・データ移行・セキュリティ・アプリケーション依存関係など、さまざまな技術的検討が必要となります。自社内にクラウド専任の部署や高度な技術者がいない場合でも、外部支援を活用することで、トラブルを回避しながらスムーズかつ適切に移行を進めることが可能です。
最小限のダウンタイムで機会損失を防げる
移行支援を手掛けるAWSパートナーは、業界の稼働時間や監査要件を踏まえてスケジュールを設計し、サービス停止を最小限に抑える方法を提案します。多くの場合、切り替え前にテスト環境を構築し、通信制御や段階的切り替えなどをすることにより、業務継続状態での移行あるいは停止時間の短縮ができます。停止時間が売上や業務効率に直結する企業にとって、機会損失を防げる点は移行支援の重要な価値といえるでしょう。

セキュリティ要件やコンプライアンス基準に対応した環境を構築できる
AWSパートナーの多くは、ISO 27001やSOC 2などの国際的なセキュリティ基準に準拠した環境を設計することが可能です。AWSはアクセス制御・データ暗号化・監査ログ管理などの機能に対応しており、移行支援サービス事業者はこれらを組み合わせて安全性の高い構成を設計できます。さらに、医療・金融といった高度な規制が存在する業界向けのコンプライアンスプログラムも豊富で、業界特有のセキュリティ要件に配慮した構築が可能です。
AWS移行支援を利用する際の流れ|4つのフェーズ
AWS移行支援サービスでは、段階的なプロセスに基づいてデータのクラウド移行を進めます。具体的には、調査・計画・移行・運用という4つのフェーズを踏むことで、リスクを抑えながらスムーズなクラウド移行を実現できます。

調査
最初のフェーズでは、現行システムの構成、依存関係、利用しているサーバー・ネットワーク・ストレージなどのリソースを分析し、どの範囲をAWSへ移行するかを整理します。この際、AWS ADSを用いてオンプレミス環境に存在するサーバーのスペックや稼働状況、アプリケーション依存関係などを自動検出し、移行判断に必要な情報を収集します。このフェーズでは、運用コスト・セキュリティ・可用性の課題を把握し、改善ポイントを洗い出すことも重要です。
計画
続くフェーズでは、アセスメント結果をもとに、最適な移行方式を決定します。代表的な方式として挙げられるのは、アプリケーションをほとんど変更せずに移す「Rehost」、一部をクラウド向けに調整する「Replatform」、アーキテクチャから見直す「Refactor」などです。
クラウド移行方式にはRehost・Replatform・Refactorのほか、AWSが整理している7つの移行戦略(7つのR)が存在します。移行時は、アプリケーション全体を一度に再設計するのではなく、まずRehost・Replatformにより移行を完了させ、モダナイズは移行後に段階的に進める方法が一般的です。
併せて、移行期間や必要なリソース、ツールの選定、テスト計画、本番切り替え手順などを設計しなければなりません。
移行
計画が固まったら、検証環境でPoC(概念実証)を行い、アプリケーションがAWS上で正しく動作するかを確認します。問題がなければ、本番環境に向けて段階的な移行を進め、業務への影響を最小限に抑えつつ切り替えを行います。
データ移行には、異種データベース間の移行や同期に対応できるAWS DMS、高速かつ安全にファイル転送ができるDataSyncを利用するのが一般的です。
運用
移行後は、クラウド環境が安定して稼働するよう、継続的な監視と最適化を行います。パフォーマンス監視にはAmazon CloudWatchを、コスト最適化やセキュリティにおける改善点の提案にはAWS Trusted Advisorを活用することで、継続的な運用改善が可能です。
必要に応じてスケールアウトや構成変更を実施し、ビジネス成長に合わせた最適化を図ります。
AWSの移行支援を行っている企業を利用する際の選定ポイント

AWSへのクラウド移行を成功させるためには、信頼できる移行支援サービス事業者を選ぶことが重要です。この章では、企業がAWS移行支援サービスを依頼する際に押さえておきたい4つの選定ポイントを紹介します。
AWSパートナーの認定資格や実績を確認する
依頼を検討する際の一つの指標になるのは、AWSパートナープログラムであるAWS Partner Networkに参加しているかどうかです。さらに、移行領域で高度な実績がある企業に付与されるAWS Migration Competencyを保持しているかも、信頼性の判断材料になり得ます。また、導入事例やサポート実績が公開されている企業は、類似環境でのノウハウを持っている可能性が高まるでしょう。成功事例を踏まえた提案も期待できるため、念入りにチェックしてみると良いかもしれません。
セキュリティやガバナンス体制を確認する
クラウド移行を依頼する際は、情報資産を適切に保護するためにも、セキュリティポリシーや監査対応の体制を整えている企業かどうかを確認しましょう。さらに、AWS Well-Architected Framework(クラウド上でシステムを設計・運用するためのベストプラクティス集)に準拠した設計を実施できる企業であれば、信頼性の高い構成を期待できます。
個人情報保護や業界特有の規制に対応した実績も、判断材料になります。医療・金融・公共など、高度なセキュリティ要件に対応できる企業は特に安心です。

コスト全体の見通しを立てやすいか料金体系を確認する
AWS移行では、初期費用・運用費用・追加作業費が発生する場合があるため、料金体系が明確であることが大切です。PoC費用や移行後のサポート料金が別途かかるケースもあるため、見積りの段階で内訳を細かく確認しましょう。コスト全体の見通しが立てやすい企業を選ぶことで、移行プロジェクトの予算管理がしやすく、予想外の追加費用の発生を避けられます。
サポート体制と運用フォローの充実度を確認する
移行後も安定運用できるかどうかは、サポート体制の充実度によって大きく変わります。24時間の監視体制やトラブル発生時の対応スピード、障害復旧フローなどが明確かどうかを確認しましょう。
さらに、導入後も定期的なレビューやコスト最適化の提案を行う企業は信頼性が高いと考えられます。AWSと連携したサポート窓口を設けているケースなど、問題発生時の対応がスムーズに行える点も重要なポイントです。
AWSの移行支援を検討中なら「AWSマイグレーション」
CloudCREW byGMOが提供する「AWSマイグレーション」は、既存システムの分析からAWS移行の計画策定、設計・構築から運用・管理までをワンストップで支援する移行特化型サービスです。
サービスは「SMB向け」「エンタープライズ向け」「VMware マイグレーション」など、対象企業や環境に応じた複数のプランを展開しており、比較的小規模な環境から複雑な大規模環境まで対応可能です。
AWSに移行することで、最新技術の活用やリソースの最適化、高可用性インフラの実現などのメリットがあります。
これからAWS移行を進めたい企業や、移行後の運用体制に不安がある企業にとって、トータルで任せられるソリューションとして有効な選択肢といえるでしょう。
まとめ
AWSへの移行を成功させるには、ツール選定・計画策定・データ移行・運用監視など、多くの工程を正確に進める必要がありますAWS移行支援サービスを活用することで、専門知識がなくてもリスクを抑えた移行を実現しやすくなります。さらに、導入後の運用最適化についての支援も期待できるでしょう。
AWSパートナーであるCloudCREWが提供しているサービス「AWSマネージドパック」は、設計から監視・保守までを一括で任せられるため、社内に専任担当がいない企業でもクラウド活用を加速できます。AWSへの移行をご検討中の場合は、お気軽にお問い合わせください。
参考文献
- 政府情報システムためのセキュリティ評価制度(ISMAP)、クラウドサービス移行手引書、2026年6月8日アクセス
- Amazon Web Services、移行戦略 – クラウド移行の処方箋ガイド、2026年6月8日アクセス
- Amazon Web Services、移行サービス – アマゾン ウェブ サービスの概要、2026年6月8日アクセス
- Amazon Web Services、What is AWS Migration Hub? – AWS Migration Hub、2026年6月8日アクセス
- Amazon Web Services、AWS Database Migration Service とは – AWS Database Migration Service、2026年6月8日アクセス
- Amazon Web Services、AWS Well-Architected – 安全で効率的なクラウドアプリ、2026年6月8日アクセス
- Amazon Web Services、AWS Trusted Advisor、2026年6月8日アクセス
当記事の監修
GMOグローバルサイン・ホールディングス株式会社が運営するCloudCREW byGMOでご紹介する記事は、AWSなど主要クラウドの認定資格を有するエンジニアによって監修されています。



