AWSは高い可用性と拡張性を誇りますが、世界中でたびたび障害が発生していることも事実です。業務システムの多くがAWS上で稼働しているため、障害が発生すると業務停止や収益損失など、企業活動全体に深刻な影響をおよぼす可能性があります。
本記事では、過去に発生したAWSの障害事例をもとに、主な原因や影響、被害を最小限に抑えるための対策方法を紹介します。
AWS障害が発生する理由
AWSは、300以上のサービスを世界各地で提供し、高い可用性と拡張性を備えたクラウドプラットフォームです。多くの企業が業務基盤として活用していますが、大規模な分散システムとして運用されている以上、構成要素の一部に不具合が発生する可能性を完全にゼロにはできません。

Amazon.comのCTO(2026年4月時点)であるWerner Vogels氏も、自身のブログ「All Things Distributed」で 「Failures are a given and everything will eventually fail over time(障害は避けられず、すべてのシステムはいずれ何らかの形で故障する)」 と述べています。つまり、障害の発生は想定外の例外ではなく、クラウド運用ではあらかじめ織り込むべきだという考え方です。
実際にAWSで発生する障害の原因は、システムトラブルやバグ、人為的ミス、トラフィックの過負荷、さらには地震や停電などの天災まで多岐にわたります。これらの要因は単独でも影響をおよぼしますが、複数が重なることによって大規模障害に発展するケースもあります。そのため、AWSを利用する企業は障害の発生を前提にシステムを設計し、被害を最小限に抑えるような対策が求められます。
AWS障害がもたらす主な影響

AWSの障害は、単なる一時的なシステム停止にとどまらず、企業活動全体にさまざまな影響をおよぼします。業務の中断による生産性の低下から収益の損失、コンプライアンスリスク、さらにはブランドイメージの低下まで、広範囲に及ぶ点が特長です。
業務停止による生産性の低下
AWSで障害が発生すると、多くの企業が業務停止に直面し、生産性が大幅に低下します。特に、データへのアクセスや処理が制限されると社内での情報共有が滞り、顧客対応やサポート体制にも影響を与えます。
過去の障害では2,000以上のサービスが影響を受けたケースもあり、メールの送受信や業務アプリケーションの利用ができなくなるなど、日常業務にも深刻な支障をきたしました。AWSを利用する企業は、障害時にどの範囲の業務が停止するかを把握し、代替手段を準備しておく必要があります。
収益の損失とコスト増加
AWS上で運営されているeコマースサイトや予約システムが停止すると、取引処理ができず、販売機会を逃すことにより直接的な収益の損失が発生します。特に、アクセスが集中するセール期間中の障害は、企業にとって致命的な打撃となりかねません。
さらに、復旧作業には専門知識が必要な場合が多く、外部エンジニアの支援やシステム監査を依頼することによって追加コストが発生します。AWSの障害は単なる一時的な停止ではなく、ビジネスの損益に直結するリスクといえます。
コンプライアンスへの影響
多くの企業は個人情報や財務データなど、法的・契約的に保護が求められる機密情報をAWS上に保存しています。障害によってデータの可用性や整合性が損なわれると、業界規制や契約上の義務に違反する可能性があります。
このような事態が発生すると、監督官庁からの罰則や取引先との契約違反による損害賠償に発展するケースもあります。したがって、企業は平常時からデータのバックアップや冗長化設計を徹底し、システム停止時にも法令遵守を維持できる体制を整えておくことが重要です。
企業ブランド・評判の損失
顧客やユーザーは、安定して利用できるサービスを当然のように求めています。AWS障害によってシステムが長時間停止すると、企業への信頼が失われ、ユーザー離れを招く恐れがあるでしょう。
特に、障害発生後の対応が遅れたり、状況説明が不十分だったりすると、SNSなどを通じてネガティブな情報が拡散し、ブランドイメージに対し長期的な悪影響を与えることがあります。障害時には迅速な情報発信と誠実な対応を行うことが、信頼回復への糸口となるでしょう。
過去のAWS障害の事例
東京リージョンと米国東部リージョンで実際に発生した4つの障害を紹介します。障害の原因や復旧の流れを振り返ることで、AWS利用時に想定すべきリスクや備えるべき対策が見えてきます。
東京リージョンで発生した Amazon EC2とAmazon EBSの大規模障害(2019年8月)
2019年8月23日、東京リージョンでAmazon EC2(Amazon Elastic Compute Cloud、以降EC2)のインスタンスに接続できない障害が発生しました。原因は、単一アベイラビリティゾーン(AZ)内における空調システムの障害によるオーバーヒートです。温度上昇により複数のEC2サーバーが停止し、Amazon EBS(Amazon Elastic Block Store、以降EBS)ボリュームへのアクセス性能も低下しました。
15時過ぎに冷却装置が復旧し、発生から約6時間後までに大部分が回復しましたが、完全復旧には約9時間半を要しました。また、同一AZ内での再起動やリトライが集中したため、エラー率が上昇したほか、Auto Scalingの動作にも影響がおよびました。
東京リージョンで発生したAWS Direct Connectの大規模障害(2021年9月)
2021年9月2日、東京リージョンでAWS Direct Connectに関する大規模障害が発生しました。AWS Direct ConAWSはオンプレミスとAWSを専用線で接続するサービスです。障害の原因は、ネットワーク機器のOSに潜在していた不具合と、新プロトコルの相互作用によるものでした。
この障害により、金融や運輸など幅広い業界で接続障害やパケットロスが発生し、東京リージョンへのトラフィックが不安定になりました。障害は7時30分から13時42分まで続き、約6時間にわたりサービスが断続的に停止しました。これは、クラウド環境における冗長構成とフェイルオーバー設計の重要性をあらためて示した事象です。
米国東部リージョンで発生したAmazon Kinesisの障害(2020年11月)
2020年11月25日、米国東部リージョンでAmazon Kinesis(以降、Kinesis)のフロントエンド機能を拡張した際に障害が発生しました。この障害は、サーバーOSの上限を超える数のスレッドが生成され、キャッシュ構築が完了しなかったことが原因です。これによりKinesisの処理が遅延し、Amazon Cognito、Amazon CloudWatch、Amazon EventBridge、AWS Lambdaなどのサービスにも影響がおよびました。
原因の修正後、フロントエンドフリートの再起動が実施されました。数千台のサーバーを一度に再起動するとリソースの競合が起きる恐れがあったため、再起動を段階的に行った結果、復旧には時間を要しました。
米国東部リージョンで発生したDNS関連トラブルによる大規模障害(2025年10月)
2025年10月20日(米国時間)、米国東部(バージニア北部)のUS-EAST-1リージョンでDNSに関する不具合が発生し、Amazon DynamoDBのエンドポイントが正しく名前解決できなくなったことをきっかけに、複数のAWSサービスでエラーや応答遅延が発生しました。原因は、ネットワークロードバランサーのヘルスモニタリングを行う内部サブシステムの不具合です。EC2内部ネットワークで通信障害が発生し、DNSがAmazon DynamoDB APIのアドレス解決に失敗した結果、複数のAWSサービスでエラーや応答遅延が相次ぎました。
影響は世界的に広がり、Snapchat、Reddit、Venmo、Zoomなどの主要サービスでも接続障害が報告されています。AWSは15時に「全サービスの復旧完了」を発表しましたが、一部のサービスではメッセージ処理の遅延が続きました。この障害は、クラウドサービスがDNSに大きく依存していることと、障害を前提とした冗長構成やフェイルオーバー戦略の重要性をあらためて示した事例といえます。
AWSの責任共有モデルを理解しておくことの重要性
AWSでは、クラウドのセキュリティと運用に関して「責任共有モデル」が採用されています。これは、AWSと利用者がそれぞれ担うべき責任範囲を明確にした考え方です。AWSはデータセンター・ハードウェア・ストレージ・ネットワークなど、クラウド基盤そのものの「セキュリティ」と「可用性」を保証します。
一方で、利用者側は OS・ミドルウェアの設定、アプリケーション、データ保護、アクセス管理(IAM)など、クラウド上で稼働する部分のセキュリティと運用管理を担う必要があります。
障害対策を考える際には、この責任範囲の違いを理解しておくことが極めて重要です。
なぜなら、AWS側の障害と、ユーザー設計・運用の不備による障害では、取るべき対策が大きく異なるためです。
責任共有モデルの詳細は、以下の記事で解説しています。
より深く理解したい方はぜひご参照ください。
AWS障害を防ぐための対策方法5選

AWSの障害を完全に防ぐことは困難ですが、設計や運用の工夫によって被害を最小限に抑えることはできます。ここでは、AWSの障害を防ぐための5つの具体的な対策方法について紹介します。
障害を想定した設計(Design for Failure)
AWSでは、障害は発生するものとしてシステムを設計することが基本です。どれほど冗長化を施しても、予期せぬトラブルを完全に防ぐことはできません。そのため、万が一障害が発生した場合でもサービスを継続できるように備えることが重要です。
AWSのベストプラクティスでは、システムが常に稼働し続けられるだけの高可用性を確保する構成が推奨されています。例えば、フェイルオーバー構成を導入することにより、障害時には別環境へ自動的に切り替えることが可能です。
このように、トラブルを前提に耐障害性を高めるようなシステム設計の考え方を「Design for Failure」と呼びます。どのような状況でもサービスが継続できる体制を整えることが、安定運用につながります。

複数のアベイラビリティゾーンでのリスク分散
AWSでは、1つのリージョン内に複数のアベイラビリティゾーンが存在します。各AZは独立したデータセンターであり、通信経路や電源も分かれているため、サーバーやデータベースをMulti-AZ構成にすることにより、1つのAZで障害が発生しても他のAZがバックアップとして機能します。
さらに、データのバックアップ先を別リージョンに設定することも有用です。Amazon S3では、クロスリージョンレプリケーション(CRR)を設定すれば、オブジェクトを自動的に他のリージョンへ複製できます。一方、EBSは同一リージョン内で保存されるため、リージョン障害には対応できません。必要に応じて、スナップショットを別リージョンにコピーしておくことをおすすめします。
ただし、Multi-AZ構成でも共有サービスやリージョン単位の依存関係により影響を受ける場合があります。設計時には依存リソースや運用ルールについて確認し、冗長化の範囲を明確にしておきましょう。
AWS障害に関する情報収集
AWSで障害が発生した場合には、できるだけ迅速に正確な情報を入手することが重要です。復旧までの時間を短縮するためにも、信頼できる情報源を複数確保しておきましょう。
主な確認手段としては、以下の3つがあります。
- X(旧Twitter)
- リリースノート
- AWS Health Dashboard
- X(旧Twitter)の障害アカウント
AWSの障害情報を速報するX(旧Twitter)のアカウントがあるので、障害や復旧についての最新情報を得られます。ただし、非公式の情報も含まれるため、補助的な情報源として活用し、正確な情報はAWS Health Dashboardで確認することが望ましい方法です。
- リリースノート
速報性はありませんが、AWSの公式ブログでは障害の原因や再発防止策などが公開されています。リリースノートには、障害以外にもアップデートや新機能に関する情報も記載されており、システム改善の参考としても役立ちます。
- AWS Health Dashboard
AWS Health Dashboardは、サービスの障害やメンテナンス情報をリアルタイムで確認できる最も重要なツールです。AWS Chatbotなどと連携すれば、SlackやMicrosoft Teamsに障害通知を自動送信することができます。
Dashboardには、以下の2種類のビューがあります。
| クレジットカード 海外送金(条件あり) | AWS全体のサービスステータスを誰でも閲覧可能 |
| Your Account Health(アカウントヘルス) | ログインが必要だが、自社アカウントに影響のある障害のみを確認できる。運用判断に役立つ情報を効率的に取得できる点が特長 |
障害発生時を想定した試験の実施
障害発生時に迅速かつ的確に対応するためには、定期的な障害発生試験が欠かせません。システム構成に応じた障害シナリオを用意し、実際に復旧手順を検証することにより、運用チームの対応力を高められます。
このような試験に利用可能なサービスが、AWS Fault Injection Service(以降、AWS FIS)です。AWS FISは、アプリケーションのパフォーマンスや回復性を検証するために、制御されたフォールトインジェクション実験を実行できるフルマネージドサービスです。Amazon EC2インスタンスの停止や、Amazon RDSの再起動、ネットワーク遅延の付与などの実験を通じて、障害発生時の挙動や復旧手順の妥当性を確認できます。
例えば、EC2インスタンスの停止やAmazon RDS(Amazon Relational Database Service)の再起動など、実際の障害を疑似的に発生させることによって、復旧手順の妥当性を確認できます。こうした訓練を重ねることで、障害時にも冷静に対応できる運用体制を築けるでしょう。

監視・アラート体制の構築
障害を未然に防ぐためには、AWS環境の状態を常に把握できる監視・アラート体制の構築が必要です。Amazon CloudWatchを活用することにより、サーバーやネットワーク、データベースといったリソースを単一のプラットフォームで統合的に監視できます。
Amazon CloudWatchは、AWSサービスやアプリケーションから自動的に収集したメトリクスやログを可視化し、異常を早期に検知します。しきい値を設定してアラームを作成すれば、異常検出時にAmazon SNSで通知を送信し、AWS Lambdaを起動して自動対応することも可能です。
監視と通知を自動化することによって人為的な見落としを防ぎ、障害の兆候を即座に把握できます。その結果、対応に要する時間を短縮し、アプリケーションの安定稼働と顧客体験の維持につながるでしょう。
AWSの運用負荷を軽減し、安全な環境を維持するなら「マネージドクラウド for AWS」
AWSは高い柔軟性と拡張性を備えていますが、その分、運用・監視・セキュリティ管理には専門的な知識が求められます。CloudCREW byGMO(以降、CloudCREW) が提供する 「マネージドクラウド for AWS」 は、AWSの運用を総合的に代行し、ビジネスに集中できる安定した環境づくりをサポートするサービスです。
月5,500円(税込)からインフラの設計・構築から、24時間365日の監視、障害対応、セキュリティ対策、コスト最適化まで一貫して提供。何か問題が発生した際には、即時のアラート通知と専門エンジニアによる迅速なトラブルシューティングで、安心してAWSを利用し続けられます。
また、専任のアカウントSEが日々の運用改善や最適な構成の提案を行うため、AWSの高度なサービスを無理なく活用できる点も大きな特長です。
CloudCREWなら、AWS環境の運用負荷を抑えつつセキュリティ強化を実現します。AWSの安全性や運用効率に課題を感じた場合には、ぜひ一度お問い合わせください。AWS MSP認定を取得したAWSパートナーが、最適な運用方法をご提案します。
まとめ
AWSの障害は、システムトラブルや人為的ミスなど、さまざまな要因により発生します。完全に防ぐことは困難ですが、障害を前提にした設計や監視体制の強化により、被害を大幅に抑えることが可能です。
日頃から運用体制を見直し、復旧手順や情報収集の仕組みを整えておくことが、安定したシステム運用につながります。さらに、定期的な障害発生試験や外部サービスの活用により、より実践的で強固な対策を講じることができるでしょう。
参考文献
- All Things Distributed、2026年5月7日アクセス
- AWS Documentation、障害管理 – 信頼性の柱、2026年5月7日アクセス
- Global Relay、What can financial services firms learn from the AWS outage?、2026年5月7日アクセス
- AWS、東京リージョン (AP-NORTHEAST-1) で発生した Amazon EC2 と Amazon EBS の事象概要、2026年5月7日アクセス
- AWS、Summary of the Amazon Kinesis Event in the Northern Virginia (US-EAST-1) Region、2026年5月7日アクセス
- Reuters、Amazon’s cloud unit reports outage, several websites down、2026年5月7日アクセス
- AWS、Summary of the Amazon DynamoDB Service Disruption in the Northern Virginia (US-EAST-1) Region October 19, 2025、2026年5月7日アクセス
- AWS、東京リージョン(AP-NORTHEAST-1)で発生したAWS Direct Connectの事象についてのサマリー、2026年5月7日アクセス
当記事の監修
GMOグローバルサイン・ホールディングス株式会社が運営するCloudCREW byGMOでご紹介する記事は、AWSなど主要クラウドの認定資格を有するエンジニアによって監修されています。



