AWSノウハウ
AWS運用代行のメリットとデメリット
AWS運用代行サービスの選び方や効果的な活用方法
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目次
「AWS運用代行サービス」とは、AWSの監視・運用保守を代行する法人向けサービスです。AWS運用代行サービスの基本的な概要から、その具体的なメリット・デメリット、契約やセキュリティになど関する注意点まで、代行サービス事業者の選び方におけるポイントを紹介します。
AWS運用代行サービスとは
Amazon Web Services(AWS)は、世界中の多くの企業・団体が利用するクラウドコンピューティングサービスです。AWSはインターネットを通じて手軽に利用できるものの、利用できるサービスが多岐にわたるため構築方法やセキュリティ設定が複雑で、コストも含めた運用の最適化には専門知識や経験が必要となります。そこで、注目を集めているのが「AWS運用代行サービス」です。
AWS運用代行サービスの概要
AWS運用代行サービスとは、AWS環境を構築、運用、監視、最適化する業務を専門的にサポートする外部のサービス提供者や組織によって提供される法人向けサービスです。特にAWSに関する専門家を内部に持たない企業・団体や、リソースや時間の制約から自社での運用が困難な場合に利用します。そのメリットとデメリットを見てみましょう。
AWS運用代行サービスのメリット
AWSにはクラウド環境における優れた設計・運用を促進する「AWS Well-Architected Framework」という指針を提供しています。優れた運用代行サービス事業者は、この指針を熟知していますので、目的に最適なアーキテクチャーによる構築や自動化、セキュリティ設定、コストの削減など、最新のベストプラクティスをもとにした運用が可能となります(図1)。また、24時間365日の監視とサポートを依頼すれば、より安定したシステム運用や、社内メンバーの負担軽減も期待できます。
AWS運用代行サービスのデメリット
AWS運用代行サービスの利用は、予想以上のコスト増や代行事業者とのコミュニケーションによるビジネスの遅延といったデメリットも考えられます。より長期的な視点では、自社内でのAWSに関するノウハウが蓄積されにくく、外部依存が強まることも懸念されます。さらに、データのプライバシーやセキュリティ面でのリスクも考慮する必要があります。
AWS運用代行サービスの選び方
AWS運用代行サービスでは、具体的には何の業務をサポートしているのでしょうか。多様なサービス提供者が存在する中で、それぞれが提供する業務内容や特色が異なります。一般的な業務としては、AWSのリソースの監視、セキュリティ対策、バックアップ管理、障害対応などが挙げられます。しかし、選択する際のポイントはこれだけではありません。契約方法や料金体系、提供されるサポート範囲やカスタマイズの柔軟性など、具体的な要件に合わせてサービスを選定する必要があります。
AWS運用代行サービスの種類
AWS運用代行サービス事業者が提供するサービスの例をまとめました。
項目 | 内容 |
---|---|
AWS導入コンサルティング | ビジネス要件に応じたAWSの導入や移行戦略をアドバイスします。 |
設計・構築支援 | 適切なAWSリソースの選択と設定をサポートします。 |
監視 & 24時間365日体制 | AWS環境の継続的なモニタリングや異常が発生した場合のアラート発報を行います。 |
障害対応 & 障害解析・ボトルネックの調査 | システム障害時の迅速な対応と原因特定を行い、修復/復旧後にはボトルネックや問題点を明確にします。 |
バックアップ管理 | データの安全性を保つためのバックアップとリストア戦略の策定・実施を担当します。 |
セキュリティ & 脆弱性診断 | AWS環境のセキュリティ対策支援や脆弱性チェックを提供します。 |
運用 & 運用手順書の作成 | 日常的なAWSリソースの管理と運用ガイドラインの文書化をサポートします。 |
専門技術者によるサポート | 深い技術知識を持つ専門家がサポートを提供し、社内メンバーが抱える疑問や課題解決を支援します。 |
内製化支援 | 企業がAWS運用を内部で実施するためのノウハウやトレーニングを提供します。 |
請求代行 | AWS利用料の管理と請求を代行し、ドル建てのクレジットカード払いでなく、日本円での請求書払いなど、企業にとって利用しやすい請求形態を提供します。 |
AWS運用代行サービスの比較
AWS運用代行サービスを比較検討する際、まず自社に必要な機能やサービスが提供されているかを確認することが大切です。次に、24時間・365日のサポート対応など、具体的な業務範囲をチェックしましょう。事業者の技術的な信頼性や実績も重要な判断基準となります。特に、AWSの公式パートナーとして認定や保有資格、運用に関する具体的な実績はサービスの品質を示す重要な指標です。さらに、自社の特定のニーズに合わせてサービスをカスタマイズできるかどうかや、料金設定が明確で妥当なものであるかも確認ポイントとして挙げられます。
AWS運用代行サービスの契約について
AWS運用代行サービス事業者との契約を検討する際、サービス内容以外に注目すべきチェックポイントがいくつかあります。まず、契約期間には注意が必要で、月次や年次の定期更新が一般的です。最低利用期間もチェックしましょう。料金体系も重要で、初期費用に加え、月額の料金が固定料金型なのか、変動料金型なのか、また両方を組み合わせたハイブリッド型なのかを確認しましょう。また、サービスの範囲の詳細、契約終了時の手続きや条件、データの取り扱いや保護方針、そして連絡体制、利用規約など、具体的な条項を確認して契約しましょう。
AWS運用代行の効果的な活用方法
AWS運用代行サービスを導入する流れはどのようになっているのでしょうか。ここでは、AWS運用代行サービスの具体的な導入ステップと、導入事例を紹介し、効果的な活用方法について考えます。
AWS運用代行の導入方法
AWS運用代行サービスの導入の流れは、サービス提供事業者が運用要件をヒアリングする段階から始まります。現在のITインフラ環境や運用の状況を確認し、最適なクラウド運用のポイントを説明します。その後、顧客の課題を解消するため、必要な運用代行のプランを提案します。複数の事業者から提案をもらって比較検討しましょう。提案内容に対して合意ができる状態になれば、契約を交わします。
契約締結後、サービス提供事業者は最適な運用設計を行います。この設計を基に、監視の項目、緊急時の連絡先、障害時の対応方針などの手順書など、監視・運用のワークフローを確定します。これらの手順書を基に、運用サービスが開始されます。さらに、運用が開始されてからも、適宜ミーティングやメッセージのやりとりをしながら運用のためのタスクを管理していきます。
AWS運用代行の活用事例
AWS運用代行の実際の活用事例を紹介します。まず、自社データセンターからAWS環境への移行ケースでは、運用代行サービス事業者が環境の違いを明確に認識し、AWSに適した方法でサービスを移設しました。結果として、AWSのマネージドサービスの恩恵により、運用・メンテナンスの手間やコストが大幅に削減されました(図2)。
次に、複数のサービスを扱っている企業の事例。ここでは、複雑化していたAWSの監視・運用を、運用代行事業者の手により整理・再整備しました。最後に、オンラインゲームの事業譲渡を受けた事業者です。新しい開発環境と本番環境のセキュリティ強化や、ログの収集などの課題に直面していましたが、運用代行のサポートでこれらの課題をクリアし、ゲーム提供を安定的に続けることができました(図3)。
いずれのケースも、ビジネスの大きな転換点でAWS運用代行サービス事業者の支援が役立っていることがわかります。
AWS運用代行の料金
AWS運用代行サービスの利用に際して、その料金体系はどのようになっているのでしょうか。多くの企業・団体がクラウド環境を効果的に活用しようと考える中で、コスト面の透明性や効率化が大きな関心事となっています。運用代行をどのように活用すればコストを最適化できるのでしょう。ここではAWS運用代行サービスの主な料金構成や、コスト削減のためのヒントについて紹介します。
AWS運用代行の料金体系
AWS運用代行サービスの料金体系にはさまざまなパターンがあります。サービスの利用開始時には初期費用が発生することが一般的です。これはシステムの初期設定や環境の調整などの作業に関連します。基本的な運用サポートや定期的なメンテナンスに必要な月額費用が設定されている場合が多いです。サービスの範囲で事前に定められた固定費用や、使用したリソースの量に応じた従量制費用が考えられます。特定の要求や追加作業が生じた際に都度発生する料金、長時間や夜間・休日の対応に基づく対応時間料金、さらにはサポートリクエストごとのチケット料金など、さまざまな料金体系が存在します。サービス事業社から出された料金プランの内容を把握し、自社のニーズや予算に合わせてサービスを選ぶことが大切です。
AWS運用代行利用によるコスト削減方法
AWS運用代行のコスト削減には主に2つのアプローチが考えられます。1つは提供されるサービス内容を厳選することです。本当に必要なサービスだけを利用することで余分なコストを削減できます。2つ目は、AWSの利用方法やプランの見直しです。これには、インスタンスタイプの適切な設定、稼働時間の最適化、リザーブドインスタンスの契約での長期利用割引、コスト効率の良いAWS Graviton プロセッサの活用などが含まれます。
このほか、代行事業者が提供する請求代行サービスによっては、ボリュームディスカウントのメリットを享受できる可能性もあります。AWS運用代行の提案を受ける際、コスト予測を要求することで、より明確な判断ができるでしょう。
AWS運用代行の注意点
AWS運用代行を依頼する場合、サービス事業者の技術力や経験、コミュニケーション能力、契約内容などさまざまな要因により、期待通りのサービスを受けられないことがあります。ここでは、いくつかの注意点や事業者選びのポイントを紹介します。
AWS運用代行のセキュリティに関する注意点
AWSは「共有責任モデル」を採用しており、セキュリティはAWSとユーザーの両方が分担することになっています。AWSはインフラストラクチャのセキュリティを担保し、ユーザーは自身がAWS上で動かすアプリケーションやデータのセキュリティについて責任を持ちます。
そこで、AWS運用代行を依頼する際のセキュリティリスクとしては、不適切なアクセス権の設定、ネットワークの設定ミス、セキュリティアップデートの遅延、ログ管理の不足、多要素認証の不活用などが考えられます。これらの点をフォローできる運用代行事業社を選びましょう。
失敗事例に見る、AWS運用代行の運用に関する注意点
AWS運用代行を利用しても、時折満足のいく結果が得られないことがあります。例えば、AWSの料金が予想を超える場合、それは代行事業者のコスト管理やリソース最適化のためのスキルが不足しているのかもしれません。サービス範囲が限定的な事業者では、AWSの多様なサービスや新機能に対応できない可能性があります。さらに、事業者の技術力や経験が不十分な場合、コストだけでなく、障害や情報流出のリスクも高まり、企業やブランドの評価、業績に悪影響をもたらす可能性が高まります。
確かなAWS運用代行事業者を選ぶには
AWS運用代行サービスの事業者を選ぶ際、まず自社の目的や将来構想を明確に定義することが重要です。その上で、事業者の技術力やセキュリティ、コスト最適化の取り組み、過去の実績を確認しながら、提案内容を評価します。契約前にはサポート範囲や業務内容を明確にすることで、後のトラブルを予防します。適切な運用代行事業者との協働によって、AWSのポテンシャルを最大限に活用し、ビジネスを効率的に成長させましょう。
最後に、AWSパートナーであるGMOグローバルサイン・ホールディングス株式会社が運営するCloudCREW byGMO では、24/365対応のAWS監視・運用代行サービス「マネージドクラウド forAWS」を提供しています。AWS監視・運用の課題をお抱えであれば、お気軽にご相談ください。
GMOグローバルサイン・ホールディングス株式会社が運営するCloudCREW byGMOでご紹介する記事は、AWSなど主要クラウドの認定資格を有するエンジニアによって監修されています。