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AWSノウハウ

【クラウド時代の選択】
AWSとオンプレミスの完全比較ガイド

  • AWS入門
  • AWS基礎知識

目次

急速に変化するビジネス環境において、柔軟で効率的なIT基盤の運用は企業の生命線です。クラウドコンピューティングの進化により、企業のIT戦略は転換期を迎えているといえるでしょう。

IT基盤を構築する環境において、AWSとオンプレミスの選択は単純な技術的判断ではなく、ビジネスの成長を左右する戦略的な決断です。しかし、AWSとオンプレミスで具体的にどのような違いがあるのかわからない、という方は多いのではないでしょうか。

そこでこの記事では、AWSとオンプレミスを比較し、両者の特徴やメリット・デメリット、移行において考慮すべき事項などについて解説します。

AWSとオンプレミスの比較

AWSとオンプレミスを選択する際は、両者の違いや特徴について理解することが重要です。はじめに、AWSとオンプレミスそれぞれの概要について解説・比較します。

システムアーキテクチャの基本的な違い

オンプレミスは、自社内にサーバーやそれに付随するネットワーク機器を物理的に設置し、すべてを自社で管理するシステム形態です。データセンターを利用する場合もありますが、物理的に管理する必要がある点は同様です。一方、AWSはインターネットを介してサーバーリソースを柔軟に利用できるクラウドサービスであり、ハードウェアの購入や設置スペースの確保は必要ありません。

さらに、オンプレミスではサーバーの更新や拡張に多大な時間とコストを要しますが、AWSは数分で新しいリソースの追加・削除が可能なため、ビジネスの変化に迅速に対応できる点が大きな特徴です。

データセンター管理の観点からの比較

オンプレミスでは、データセンターの運用に関わるあらゆる要素を自社で管理する必要があります。具体的には、ハードウェアの購入、設置スペースの確保、電力容量の計算、空調管理、故障時の予備機準備など、複雑で多岐にわたる管理業務が発生します。

データセンターのサービスを利用していても、システム運用を完全に委任することはできません。対してAWSは、これらの煩雑な管理作業をクラウドプロバイダーが一括して担うため、企業は本来の事業に集中できる環境を確保できます。

インフラストラクチャの柔軟性と制御性

オンプレミスは、高いカスタマイズ性を持ち、企業独自のシステム設計が可能です。一方、AWSは既存のサービスを活用するため、カスタマイズの範囲は限定的に見えます。しかし、IaaSモデルではCPUやストレージの迅速な増強が可能で、柔軟性と拡張性を兼ね備えています。

さらに、AWSは数百を超えるサービスを提供しており、企業の多様なニーズに対応可能です。例えば、急激なトラフィック増加に対して、自動的にリソースをスケールアップする機能など、柔軟な対応が可能となっています。

セキュリティ要件の違い

セキュリティの観点から見ると、オンプレミスは自社のセキュリティポリシーに完全に準拠したシステム設計が可能です。一方、AWSのセキュリティレベルは非常に高く、多くの場合、企業内システムよりも安全性が高い傾向にあります。

AWSはハイレベルなセキュリティ専門家が常に最新の脅威に対応し、多層的なセキュリティ対策を講じています。また、セキュリティ認証も豊富に取得しており、金融や医療などセキュリティの厳格な規制産業でも安心して利用しやすいといえるでしょう。AWSまたはオンプレミスを選択する際には、両者のセキュリティに対するアプローチや考え方の違いについて理解することが重要です。

AWSのセキュリティに関しては、こちらの記事で解説しているため、併せてご覧ください。
【初心者向け】AWSのセキュリティ基礎-基本機能と対策方法について解説

テクノロジー革新への対応力

技術革新への対応において、オンプレミスの場合は新技術の導入に際し、多大な時間とコストを要します。対してAWSは、最新のテクノロジーへのアクセスが容易で、常に最新のイノベーションを即座に取り入れることが可能です。

AIや機械学習、IoTなどといった最先端技術を、すぐに利用可能な点が大きな利点です。また、AWSは継続的にサービスをアップデートし、新機能を迅速に提供しているため、常に最新の技術トレンドに対応しています。

初期投資、ランニングコストの違い

コスト面では、オンプレミスは初期投資が高額で、ハードウェアの購入、システムの構築、人件費などで数百万から数千万円のコストがかかることもあります。一方、AWSは従量課金制で初期投資を抑制可能で、必要に応じてリソースをスケールできるため、コスト効率が高くなります。

さらに、AWSは2006年にサービスが開始されてから100回以上の値下げを実施しており、継続的なコスト最適化が可能です。また、電力費、冷却費、保守費用などの間接的なコストも大幅に削減できるため、総所有コスト(TCO)の観点からも優位性があります。

運用面での評価

運用の観点から見ると、オンプレミスは自由度が高く、システムの完全な制御が可能ですが、運用負荷も高くなります。対してAWSは、運用の簡素化、スケーラビリティ、高可用性が特徴で、企業の技術的負担が大幅に軽減されます。自動化ツールや監視サービスが充実しており、障害検知や復旧プロセスの効率化も可能です。

AWSの監視については、こちらの記事でも詳しく解説しています。
AWSの監視でクラウド環境を守る!効果的な監視戦略と実践テクニック

オンプレミスからAWSに移行するメリット

オンプレミスからAWSに移行する場合、さまざまなメリットが考えられます。ここでは、AWS移行によってもたらされる代表的なメリットについて一つずつ解説します。

リソースの動的な拡張性

クラウドコンピューティングの最大の利点は、リソースの柔軟な管理にあります。AWSは従量課金制のため、企業環境の変化に応じて瞬時にリソースを調整できます。

例えば、ECサイトの繁忙期にはサーバー台数を即座に増強し、ピーク時を過ぎれば元の規模に戻す、といった効率的なインフラ運用が可能です。予期せぬトラフィック増加にも迅速に対応できるため、ビジネスにおける機会損失を防げます。このスケーラビリティは、従来のオンプレミス環境では実現困難だった迅速な対応を可能にします。

コスト削減効果

AWSへの移行は、企業のコスト構造を根本的に変革します。AWSでは初期投資や設備費用が不要で、インフラ構築コストは平均して31%ほどの削減を実現しています。従量課金制により、実際に使用したリソース分のみを支払うため、過剰投資のリスクを大幅に軽減可能です。

加えて、AWSの継続的な価格最適化により、長期的に見ても経済的なメリットが期待できます。さらに、ハードウェア管理や保守運用に関わるコストも削減され、浮いたリソースを戦略的な投資や新規事業の開拓に振り分けることも可能です。

セキュリティ強化

AWSは、エンタープライズレベルの高度なセキュリティ対策を提供します。具体的には、IAMによるきめ細かなアクセス権限管理、AWS WAFやAWS Shieldによる不正アクセスの防止、Amazon GuardDutyの機械学習を活用した脅威検出などです。

AWSでは、多層的なセキュリティ機能を統合的に提供しています。これらの機能を一つのプラットフォーム上で完結可能な点は、企業のセキュリティ対策において大きなメリットです。さらに、AWSは最新の脅威に対応するため継続的にセキュリティ機能を更新し、常に最新のセキュリティ基準を維持できます。

イノベーション加速

AWSは最新のテクノロジーへの迅速なアクセスを可能にし、スタートアップから大企業まで技術革新を支援します。特に生成AIの分野では、Amazon Bedrockにより、プライバシーとセキュリティを確保しながら、生成AIアプリケーションの開発をシンプルに実現可能です。

クラウドの柔軟性により、企業は新しいサービスや製品を迅速に立ち上げることができます。スケーラブルな環境で事業拡大が可能となり、データ駆動型のイノベーションを加速させることができます。さらに、AIや機械学習などの最先端技術を、追加コストなしでただちに利用できる点も魅力の一つです。

オンプレミスからAWSに移行する際の考慮事項

オンプレミスからAWSへの移行は、企業のビジネス戦略や技術的要件に応じて慎重に計画する必要があります。AWS移行における重要な考慮事項について、一つずつ解説します。

移行計画の立案

クラウド移行を成功させるには、綿密な計画から始めます。現行システムの包括的な分析は、移行プロセスの第一歩です。既存のアプリケーションやデータベース、ネットワーク構成について詳細に調査し、AWS環境への移行可能性を徹底的に評価する必要があります。移行の目的を明確にし、具体的なスコープや現実的なタイムライン、必要なリソースの特定が重要です。

移行の際には、AWS Migration Acceleration Program(MAP)などのフレームワークを活用し、段階的かつ体系的な移行アプローチについて検討することをおすすめします。段階的なアプローチを検討することにより、リスクを最小限に抑えながら、スムーズな移行を実現できます。

データ移行の技術的課題

データ移行では、異なる環境間におけるデータの互換性やスキーマの変換、パフォーマンスの維持が移行における主要な技術的課題となります。データの整合性を保ちながら、ダウンタイムを最小限に抑えるためには、綿密な事前調査と移行戦略が不可欠です。

移行前には、データの種類や量、移行先のアーキテクチャを詳細に分析し、適切な移行ツールと手法を選択する必要があります。また、移行後のデータ検証プロセスを事前に設計し、データの正確性と完全性を確保することが肝要です。AWS Database Migration Service(DMS)などのツールを活用することにより、データの整合性を保ちながら、ダウンタイムを最小限に抑えることができます。

リスク管理

移行プロセスにおけるリスク管理は、移行プロジェクトの成否を左右する重要な要素です。システム停止、データ損失などの潜在的なリスクを事前に特定し、包括的なリスクアセスメントが不可欠です。ベストプラクティス集である「AWS Well-Architectedフレームワーク」を活用し、バックアップ戦略と段階的な移行アプローチを設計することにより、移行リスクを軽減できます。

移行後も継続的なモニタリングを実施し、潜在的なリスクに対し即座に対応できる体制を整えることが重要です。リスク管理は単発的な作業ではなく、移行プロセス全体を通じて継続的に実施する必要があります。

パフォーマンス評価

移行後のシステムパフォーマンスを事前に予測し、評価することは非常に重要です。クラウド環境とオンプレミス環境のリソース要件やネットワーク帯域幅、レイテンシーなどの違いについて詳細に分析し、移行後のシステム性能を最適化する必要があります。そのためには、事前のベンチマークテストと、移行後の継続的な性能モニタリングの実施が欠かせません。

また、想定外のパフォーマンス低下を防ぐため、負荷テストの実施や段階的な移行アプローチも検討する必要があるでしょう。

コンプライアンス対応

移行プロセスでは、法的要件や規制、セキュリティ要件の遵守が不可欠です。特に機密データを扱う産業では、プライバシーデータの取り扱い、情報セキュリティ、業界特有のコンプライアンス基準について慎重に考慮する必要があります。

AWS Identity and Access Management(IAM)やAWS Artifactなどのツールを活用し、移行前後において徹底的な監査と継続的なコンプライアンス管理を実施することが要求されます。また、定期的な見直しと更新を行ない、常に最新の規制要件に対応できる体制を整えることが重要です。

AWSとオンプレミスの連携(ハイブリッドクラウド)

クラウド移行は単一の選択肢ではなく、さまざまなアプローチが存在します。その一つがAWSとオンプレミスを連携させる「ハイブリッドクラウド」です。ハイブリッドクラウドは柔軟で効率的なIT基盤を実現するための鍵となりえるため、AWSとオンプレミスの連携について簡単に解説します。

ハイブリッドクラウドの基本概念

ハイブリッドクラウドは、パブリッククラウド・プライベートクラウド・オンプレミスといった複数の異なる環境を連携して統合し、単一の環境として運用するアプローチです。多様なインフラストラクチャを標準化された技術で結合し、データとアプリケーションの移動可能性を実現します。企業は自社の目的に応じて、最適な環境の組み合わせを選択できるため、柔軟で効率的なIT基盤の構築が可能となります。

接続方式の選択

ハイブリッドクラウドの接続方式は、企業のニーズによって大きく異なります。接続方式としては、おもに次の3つが挙げられます。

  • インターネット接続
  • VPN(Virtual Private Network)
  • 閉域網(専用線)

インターネット接続は低コストで簡易的ですが、セキュリティリスクが高くなります。VPNは暗号化によって安全性を確保し、閉域網(専用線)は高いセキュリティと安定した通信を実現します。利用目的やシステムの特性を十分に理解し、最適な接続方式を選択することが重要です。

セキュアな環境構築

ハイブリッドクラウドは、セキュリティ戦略においても重要な役割を果たします。例えば、機密性の高いデータはプライベートクラウドやオンプレミスに、一般的な情報はパブリッククラウドに配置する、というような使い分けです。これにより、コストを抑えつつデータの特性に応じたセキュリティ環境を構築できます。さらに、複数の環境にデータを分散させることで、リスクの分散も可能です。

データ同期と一貫性の確保

異なる環境間におけるデータの同期は、ハイブリッドクラウドにおける最も複雑な課題の一つです。アプリケーションとデータを柔軟に移動させ、同期するためには、高度な統合技術とオーケストレーションが必要となります。デジタル環境の急速な変化に対応するため、ワークロードやデータセットを最適な環境へ自動的に配置するような戦略を構築します。

運用管理の統合アプローチ

ハイブリッドクラウドの運用管理には、複雑な課題がともないます。異なる環境を横断的に可視化し、一元的に管理するためには、統合プラットフォームの活用が不可欠です。運用の自動化やガバナンスの強化、インシデント対応の迅速化を実現するようなアプローチが成功の鍵となります。

AWS Outpostsの活用

AWS Outpostsは、AWSサービスをオンプレミス環境に拡張するソリューションです。フルマネージドなAWS環境をオンプレミス環境に設置可能で、新しいハイブリッドクラウドの形を実現します。低レイテンシーと高いセキュリティを両立させ、企業のIT戦略に柔軟性をもたらします。AWSを用いたハイブリッドクラウドを構築する際は、AWS Outpostsの利用も検討するとよいでしょう。

AWSの導入は定額で構築から運用までできる「AWSマネージドパック」がおすすめ

クラウド環境とオンプレミス環境とでは、設計から運用までさまざまな点で異なります。そのため、AWSの知見がない場合には、AWS環境においてクラウドネイティブなシステムとして、設計から運用までを行なうことは容易ではありません。さらに、オンプレミス環境との連携も検討する場合には、より困難な任務といえるでしょう。

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まとめ

AWSをはじめとするパブリッククラウドは、従来のオンプレミス環境よりも優れた点が多く存在します。変化が激しいデジタル環境において、システムの柔軟性・拡張性を確保しやすいAWSは、企業競争力を高めるうえで重要な選択肢となってきています。

しかしながら、オンプレミス環境にも利点はあるため、両者の違いを理解したうえで自社にとって最適な選択をすることが重要です。ハイブリッドクラウドという選択肢もあるため、自社に適したITインフラの形をこの機会に見直してみてはいかがでしょうか。

CloudCREW
当記事の監修

GMOグローバルサイン・ホールディングス株式会社が運営するCloudCREW byGMOでご紹介する記事は、AWSなど主要クラウドの認定資格を有するエンジニアによって監修されています。

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