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クラウドジャーニーとは?
AWSが提案する4ステージと成功に導くためのポイント

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目次

いまや、多くの企業がクラウドサービスを積極的に活用しています。システムのクラウドへの移行はDX推進の要ともいえますが、その実現には多くの課題も存在します。「クラウドジャーニー」はその道のりであり、最終目的といえる「クラウドネイティブなシステム」を構築するためには綿密な移行計画と実行が欠かせません。

この記事では、クラウドジャーニーの概要およびAWSが提案する4つのステージ、クラウドジャーニーの課題や成功に導くためのポイントについて解説します。

クラウドジャーニーとは?

クラウドジャーニーとは、企業システムのクラウド化の道のりを表す概念です。デジタルトランスフォーメーション(DX)を推進するための戦略的な取り組みであり、企業におけるITインフラのDXに対し重要な概念として注目されています。

ここでは、クラウドジャーニーの定義や必要性、DXとの関係について解説します。

クラウドジャーニーの定義

クラウドジャーニーは、企業が既存のオンプレミスシステムからクラウド環境へと段階的に移行する継続的なプロセスを意味します。単なる技術的な移行ではなく、ビジネスモデルや組織文化の変革をともなう包括的な取り組みであり、計画立案から全社的な展開、クラウドネイティブ化に至るまでの長く複雑な道のりを旅路にたとえて表しています。

クラウドジャーニーの必要性

現代において、クラウドジャーニーは企業の競争力を維持するために不可欠な戦略の一つです。企業システムのクラウドへの移行により、コスト削減、柔軟性の向上、イノベーション創出など多様なメリットを享受できます。クラウドジャーニーを通じて段階的かつ計画的にクラウド移行を進めつつ、リスクを最小限に抑えながら、戦略的にクラウド環境を整備することが求められています。

クラウドジャーニーとDXの関係

クラウドジャーニーは、DX推進のための重要な基盤です。多くの企業はクラウド技術により、従来抱えるITインフラの制約から解放され、より柔軟で拡張性の高いシステム環境を実現することが必要です。

各企業がクラウドによるDX化を加速させ、新しいビジネスモデルの創出や迅速な市場対応を可能にするためには、クラウドジャーニーを描き、推し進めることが不可欠です。

AWSにおけるクラウドジャーニーの4つのステージ

AWSはクラウド移行とその後の活用までの道のりを、企業の戦略的な変革プロセスとして4つのステージに体系化しています。各ステージは企業がクラウド環境に円滑に移行し、最大限の価値を創出するための重要な指針となります。

それぞれのステージについて詳しく見ていきましょう。

Assess(評価)

Assessステージは、クラウド移行における最初のフェーズで、企業のクラウド戦略の重要な基盤を形成する段階です。このステージでは、現状の業務システムを詳細に分析し、クラウド移行によって得られるビジネス価値や、移行戦略を明確にします。

具体的には、既存のITインフラ、アプリケーション、業務プロセスを包括的に評価し、クラウド移行の優先順位と戦略を策定します。また、技術的な観点からいえば、レガシーシステムの課題、クラウド移行の難易度、予想されるリスクなどを特定、移行パスを選択します。

さらにビジネス的な観点から、移行によって期待される効果(コスト削減、業務効率化、イノベーション創出など)を具体的に検証することも重要です。

クラウド移行が企業の中長期的な戦略にどのように貢献できるかについて明確にするとともに、投資対効果を慎重に検討するステージです。

Mobilize(移行準備)

Mobilizeステージは、Assessステージで収集した情報をもとに、具体的なクラウド移行計画を立案し、システムの移行準備を整えるステージです。このステージでは、クラウド移行に必要なスキル、プロセス、ツールを整備し、組織全体で変革を推進します。

課題としては、クラウド移行計画の立案とリソース確保が困難であることが挙げられます。そのため、クラウドセンターオブエクセレンス(CCoE)の設立や、チームメンバーのスキルアップトレーニングなどの取り組みが重要です。また、小規模なパイロット(試行)プロジェクトを通じて実践経験を積み、移行プロセスの課題を事前に洗い出すアプローチが推奨されています。

組織全体のクラウドリテラシーを高め、移行に対する組織的な準備を整えることが、このステージの重要な目的となります。

Migration(移行)

Migrationステージは、システムを実際にクラウド環境へ移行する最も重要なフェーズです。AWSが提唱する7R(Relocate、Rehost、Replatform、Repurchase、Refactor、Retire、Retain)の移行戦略から、各システムに最適なアプローチを選択します。

移行の複雑さや影響範囲に応じて、段階的な移行戦略を採用し、本番システムへの影響を最小限に抑えることが求められます。具体的には、まず影響の少ないシステムから移行を開始し、徐々に重要なシステムへと移行範囲を拡大していくプロセスが推奨されます。つまり、7Rに基づいた移行計画の策定、リハーサルの実施、部分移行と全面移行を段階的に実施することが重要です。

Modernization(近代化・最適化)

Modernizationステージは、クラウドへの移行後にシステムの継続的な最適化とイノベーションを追求するフェーズです。単なる移行で終わらせず、クラウドネイティブな設計や最新のテクノロジーの活用により、ビジネス価値を最大化することを目指します。

システム分析、アーキテクチャの再設計、新技術の導入などを通じて、競争力の向上と業務効率の改善を実現するステージです。このステージでは、クラウドの柔軟性と拡張性を最大限に活用し、継続的な改善と革新を追求することが重要です。

AWSによるシステム分析やTo-Beアーキテクチャを確認すると、モダナイゼーション計画を立てやすくなります。まずは、PoC(Proof of Concept:概念実証)やパイロット移行によりスキルや経験を積むために、小さく始めることが推奨されます。

AWSのサポートサービスを活用したクラウドジャーニーの推進

AWSは、企業のクラウド移行を包括的に支援するためのさまざまなサポートサービスを提供しています。

AWSプロフェッショナルサービスによるクラウドジャーニー支援

AWSプロフェッショナルサービスは、AWSの専門家チームがクラウド移行やモダナイゼーションを直接支援するサービスです。経験豊富なAWSエキスパートチームが、顧客独自のビジネス要件に合わせてカスタマイズされた移行計画を設計し、移行戦略の立案から実行まで、エンドツーエンドでサポートします。

技術的な複雑さや組織的な変革に対して、きめ細かなガイダンスと実践的な支援を行ない、クラウド移行を成功へと導くサービスです。

AWS Well-Architectedフレームワークを用いたアーキテクチャレビューと改善

AWS Well-Architectedフレームワークは、クラウドアーキテクチャの設計と評価のための包括的なガイドラインを提供します。6つの重要な柱(オペレーショナルエクセレンス、セキュリティ、信頼性、パフォーマンス効率、コスト最適化、持続可能性)に基づいて、システムアーキテクチャを徹底的に分析し、潜在的なリスクや改善点を特定するフレームワークです。

このフレームワークを活用することにより、企業は最新のベストプラクティスに沿ったクラウドアーキテクチャを構築し、継続的に最適化を図れます。

AWSマネージドサービスを活用した運用負荷の軽減と最適化

AWSマネージドサービスは、インフラストラクチャの運用管理を大幅に簡素化し、企業のIT部門の生産性を向上させます。データベース、コンピューティング、ストレージなど、さまざまなサービスにおいて、インフラの自動化、パッチ管理、セキュリティ更新、バックアップなどの複雑な運用タスクをAWS側で包括的に管理します。

AWSが提供する自動化された運用プロセスや監視機能を活用することにより、セキュリティとコンプライアンスを維持しつつ、効率的な運用を実現することが可能です。

AWSトレーニングとセルフペースラボによるスキル獲得支援

AWSは、クラウド人材育成のための総合的なトレーニングプログラムを提供しています。インストラクター主導のクラスルームトレーニングや、AWS Skill Builderのセルフペースラボを通じて、従業員は実践的なスキルを学習可能です。

クラウドジャーニーを推進するためには、クラウドに関連する知識が不可欠ですが、このようなサービスを活用することも非常に有効です。クラウド技術の最新トレンドや実装方法を学ぶことができるため、組織全体のクラウドリテラシーの向上が期待できます。

AWSパートナーエコシステムを活用した移行とイノベーションの加速

AWSパートナーネットワーク(APN)は、13万社以上の専門的なパートナー企業で構成されるグローバルなコミュニティです。これらのパートナーは、特定の業界や技術分野において深い専門知識を持ち、クラウド移行に対する困難な課題に対して最適なソリューションを提供します。パートナーとともに、企業は迅速かつ効率的にクラウドジャーニーを推進することが可能です。

クラウドジャーニーを進めるうえでの課題

クラウドジャーニーは企業にとって戦略的な変革プロセスですが、その一方で多くの困難な課題が存在します。

セキュリティに関する誤解や課題の把握不足

クラウドセキュリティに対する組織内の理解不足は、クラウドジャーニーにおける重大な障壁となります。例えば、経営層と技術部門の間でクラウドのセキュリティ品質に関する認識にギャップが生じると、スムーズな移行が実現できません。特に、クラウドのセキュリティ品質が過小評価されていたり、対策が必要な範囲を把握していなかったりすれば、クラウド環境に十分なセキュリティを確保することは困難です。

不必要な懸念や抵抗が生じやすくなるため、セキュリティに関する誤解や課題について事前に把握し、経営層と技術部門の間で共通認識を持つことが重要となります。

スキル不足とリソース制約による円滑な移行の困難さ

クラウド移行には、高度な専門知識と経験を持った人材が不可欠です。多くの組織では、クラウド技術に精通した人材が不足しており、日常的な業務負荷と移行プロジェクトの両立が課題となっています。

限られたリソースのなかで、クラウド移行に必要な時間と労力を確保することは、多くの企業にとって大きな障壁です。自社だけで対応が難しい場合には、サポートを外注化することも検討しましょう。

クラウドネイティブな開発手法への移行とスキルセット転換の必要性

クラウドネイティブへの移行は、単なる技術的な変更ではなく、組織文化全体の変革が必要です。マイクロサービス、コンテナ技術、DevOpsなどの新しい技術や手法に適応するためには、開発チーム全体のスキルセットと思考方法の根本的な転換が大切です。

変革するためには、継続的に学習すること、組織全体でイノベーション文化を育てていくことが不可欠となります。

クラウドのサイロ化による管理の複雑化

クラウド環境の拡大にともない、データと業務プロセスの分断(サイロ化)が深刻な課題となっています。各部門が独自のクラウドサービスを利用することにより、データ連携や全社的な情報共有が困難になり、管理が複雑になる事態が起こりがちです。

無計画にクラウド化を進めてしまうと、クラウドのサイロ化が生じる要因になるため注意が必要です。この課題を解決するためには、組織全体で統合的なクラウド戦略を策定し、部門間のコミュニケーションと連携を強化する必要があります。

クラウドジャーニーを成功に導くためのポイント

クラウドジャーニーを成功させるためには、戦略的なアプローチのほか組織全体の協力が不可欠です。そのための具体的なポイントについて解説します。

ビジネス目標に連動したクラウド活用の方針策定

クラウド活用の方針は、企業の中長期的なビジネス戦略と密接に連動させることが重要です。具体的には、コスト削減、イノベーションの加速、業務効率化などの明確な目標を設定し、クラウドジャーニーの方向性を定めます。

明確な方針を策定することにより、各フェーズにおける意思決定の指針となり、一貫性のある戦略的なクラウド移行が可能になります。

クラウドジャーニーのロードマップ作成とアジャイルな実行

効果的なクラウドジャーニーには、明確なロードマップが不可欠です。例えば、AWSが提唱する4つのフェーズ(Assess、Mobilize、Migration、Modernization)を参考に、各フェーズでの具体的な目標とマイルストーンを設定します。

重要なことは、柔軟性を保ちながら段階的に進行し、学習と改善を継続的に行なうことです。そのため、クラウドジャーニーにおいてはアジャイルな実行が適しています。

ステークホルダーの巻き込みと変革マネジメント

クラウド移行を成功させるには、組織全体の理解と協力が必要です。早い段階から関係者に対しクラウド移行の価値と計画を共有し、プロジェクトへの積極的な参画を促すことが重要です。

関係部署の巻き込みや社内コミュニケーションの強化などを通じて、変革への抵抗感を最小限にとどめます。特に経営層の協力を得ることによって、組織全体の変革を円滑に進めることができます。

クラウドスキルの獲得・人材育成

クラウド技術の急速な進化に対応するためには、継続的な人材育成が重要です。単に技術スキルを習得するだけでなく、クラウド技術を本質的に理解し、ビジネス価値を創出する能力を養うことが求められます。

そのためには、AWSのトレーニングプログラム、認定資格、ハンズオンワークショップ、社内勉強会の開催などを活用し、体系的かつ継続的な学習環境を整備することが重要です。

また、クラウドセンターオブエクセレンス(CCoE)を設立すれば、組織全体でのナレッジ共有と実践的なスキル向上を促進できます。

クラウドネイティブなアプリケーション設計・開発手法の導入

クラウドの真の価値を引き出すには、クラウドネイティブなアプローチが不可欠です。マイクロサービスアーキテクチャ、コンテナ技術、DevOpsなどを統合的に導入することにより、アプリケーションの柔軟性、スケーラビリティ、運用効率を大幅に向上させることができます。

例えば、大規模でモノリシックなアプリケーションを小さく独立したサービスに分割し、継続的インテグレーション/継続的デリバリー(CI/CD)パイプラインを構築することによって迅速な開発とデプロイメントを実現する、といった具合です。

AWSの運用に不安がある場合は「マネージドクラウド for AWS」がおすすめ

クラウドジャーニーはその名のとおり「旅」のようなものです。クラウドへの移行が完了をもって終了するとは限りません。むしろ、クラウドへの移行が完了後こそ、重要になるといえるでしょう。

とはいえ、クラウド環境での運用に不安を感じるご担当者の方も多いでしょう。

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まとめ

クラウドジャーニーは企業がシステムをクラウド化するための道のりを表す概念です。企業が効率的にクラウドを活用し、その恩恵を最大限に享受するためには、クラウドジャーニーが欠かせません。

クラウドジャーニーは「旅」と名がつくとおり、一朝一夕で実現できるものではありませんが、クラウドの活用が企業の成長に不可欠となっている昨今において、多くの企業が避けて通れない概念といえます。

本記事ではクラウドジャーニーにおける課題や成功のためのポイントなどについても解説しました。今回解説した内容を参考に、少しずつクラウドジャーニーを進めてみてはいかがでしょうか。

CloudCREW
当記事の監修

GMOグローバルサイン・ホールディングス株式会社が運営するCloudCREW byGMOでご紹介する記事は、AWSなど主要クラウドの認定資格を有するエンジニアによって監修されています。

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