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AWS リージョンとは?わかりやすく解説
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目次
AWS リージョンとは?海外はもちろん、国内のリージョンの数や場所、リージョンの概要や利用するメリットについて、わかりやすく解説します。
AWS リージョンとは?定義、特長やメリット
AWS リージョンの定義
AWS リージョンとは、AWSのグローバルクラウドインフラストラクチャを地理的に捉えた概念です。全世界の31の地域を指します(2023年8月時点)。話す時は、「東京リージョン」など地理的な名称(国名、州名、都市名など)を付けて呼ばれることがあります。
例)東京リージョン、シンガポールリージョン、米国東部(バージニア北部)リージョン
なお、当サイトで掲載しているシステム構成図では「アジアパシフィック (東京)」という風に、AWSの公式サイトで案内されている正式名称を使っています。
リージョンと共に使われる概念に「アベイラビリティゾーン(AZ)」があります(図1)。AWSリージョンは、複数のアベイラビリティゾーンで構成されます。そして、アベイラビリティゾーンは、AWSが契約するインフラ施設である「データセンター(DC)」の集合で成り立っています。
「◯◯リージョン」>「複数のアベイラビリティゾーン」>「複数のデータセンター」となります。
図1.リージョンとアベイラビリティゾーンの概念
AWS リージョンの特長
リージョンは、サービスを提供する単位として扱われます。リージョンごとに利用できるサービス、料金体系、レイテンシー(ネットワークの遅延)が異なります。リージョンは互いに完全に分離・独立したものとして扱われ、あるリージョンで起きた障害が他のリージョンにも影響しないよう、設計・運営されています。また、地理的に離れたリージョンほどレイテンシーが大きくなりますので、原則として利用者のいる地域に最も近いリージョンを選択します。
AWS リージョンのメリット
リージョンの選択によって最適なAWSサービスを受けることができます。また、災害などの障害に備え、複数のリージョンを使い分けてシステム構築することもできます。 リージョンという概念のおかげで、利用者は分かりやすくAWSサービス、料金を選択できます。また、地理的名称を参考にして、最もレイテンシーの少ないサービスを選択することができます。
例)東京本社のシステムを構築する場合、最もレイテンシーが少ない(=ネットワークのレスポンスが良い)点を考慮して東京リージョンを選択します。
また、災害などのリージョン障害を想定して、大阪リージョンにバックアップ用のシステムを準備しておくことができます。
AWSリージョンの数は?
AWSの公式サイトにある「AWS グローバルインフラストラクチャ」では、世界を7つのエリアに分け、エリアごとにリージョンの一覧が掲載されています。2023年8月時点、世界中に31のリージョンが存在しています(図2)。
図2.AWS グローバルインフラストラクチャマップ
世界
【7つのエリア】
北米/南米/欧州/中東/アフリカ/アジアパシフィック/オーストラリアおよびニュージーランド
【アジアパシフィック】
シンガポール/東京/ソウル/ムンバイ/香港/大阪/ジャカルタ/ハイデラバード/北京/寧夏
日本国内のAWSリージョンの数は?
日本国内には、「アジアパシフィック(東京)リージョン」と「アジアパシフィック(大阪)リージョン」の2つが存在しています。いわゆる「東京リージョン」と「大阪リージョン」です。東京リージョンは2011年に、大阪リージョンは2021年に開始されました(図3)。
図3.AWS 国内リージョン一覧
日本国内のAWSリージョンはどこにあるか?
- 1.正式名称:アジアパシフィック(東京)リージョン
- アジアパシフィック(東京)リージョンは、4つのアベイラビリティゾーンを持つリージョンです。
- 2.正式名称:アジアパシフィック(大阪)リージョン
- アジアパシフィック(大阪)リージョンは、2018年にローカルリージョンとして立ち上がりました。当初は東京リージョンの災害対策の提供が目的でしたが、その後フルバージョンのリージョンへと拡張され、2021年より3つのアベイラビリティゾーンを持つ正式なリージョンとして開始されています。
AWS リージョンコードとは?(例:ap-northeast-3)
リージョンには、リージョンコードと呼ばれる識別名があります。半角英数字と記号で構成されるリージョンコードは、AWSを利用する際のエンドポイント(URL)などに直接使用され、リージョン指定したコード実行を実現させます。
東京リージョンのリージョンコードはap-northeast-1、大阪のリージョンコードはap-northeast-3です。ap-northeast-2は、ソウル(韓国)になります。
国内のAWS リージョンコード一覧
東京リージョン ap-northeast-1
大阪リージョン ap-northeast-3
AWS リージョンによって利用できるサービスは異なる
リージョン選択時には、使えるサービスを確認しましょう。AWSの公式サイト内の「AWSリージョン別のサービス」で確認できます。
AWS アカウント開設後は、「AWS マネジメントコンソール」でも確認できます。
注)AWS アカウントによっては、一部のリージョンが無効化されている場合があります。使いたいリージョンが無効化されていたら、有効化の手続きをしましょう。
AWS、アカウントで使用できる AWS リージョンを指定する
AWSには、Amazon EC2(コンピューティング、以下EC2)やAmazon RDS(データベース)、そしてAmazon S3(ストレージ)など200以上のサービス(2023年8月時点)が提供されていますが、リージョンによって利用できるサービスには差異があります。
具体例として「新サービスのリリース」があります。
新サービスは全リージョンに正式展開する前に、いくつかのリージョンで「ベータ」「プレビュー」「プレリリース」などの表現で先行公開されることがあります。
たとえば、2022年12月に発表された新サービス「Amazon Security Lake」は米国東部(バージニア州北部)、米国東部(オハイオ州)、米国西部(オレゴン州)、アジア太平洋(シドニー)、アジア太平洋(東京)、欧州(フランクフルト)、欧州(ダブリン)でプレビュー公開されました。
AWS、Amazon Security Lake を発表(投稿日:2022/12/23)
プレビュー公開以外のリージョンで利用できるようになるには、数週間~数ヶ月のタイムラグが生じます。この状況を踏まえ、新サービスを早く試したい利用者はAWSリージョンを切り替えて使うことがあります。
AWS、Amazon EMR Serverless がバーレーンおよび香港リージョンで利用可能に
もう1つの例として、「既存サービスのアップデート」があります。具体的には、「新しいインスタンスタイプ」の提供があります。
AWS、Amazon EC2 C6id、M6id、R6id インスタンスを利用できるリージョンが拡大
上記の通り、新しい世代のインスタンスタイプもリージョンによって提供時期が異なります。なお、「プレビュー」中の新しいインスタンスタイプは、リージョン側のキャパシティーが十分でないことがあり、EC2の起動エラーとなる場合もありますので注意が必要です。
サービスリリースの情報は、以下のWebサイトで確認することができます。
AWS リージョンによってサービスの利用料は異なる
国や地域によって設備コストなどに差があることから、リージョンによってサービスの料金体系(=単価)にも若干の違いがあります。
例)EC2のオンデマンドインスタンスの時間単価(2023年月8月時点)
OS:Linux、インスタンスタイプ:t3.mediumの場合
北米東部(オハイオ)リージョン 0.0416 USD
アジアパシフィック(東京)リージョン 0.0544 USD
AWS利用料金を見積もるには「AWS 料金見積りツール」を使用すると良いでしょう。
使いたいサービスやインスタンスタイプ(スペック)、稼働条件(時間)、そしてリージョンを選択すると、「1カ月月あたりのコスト」や「合計12カ月間のコスト」を算出することができます。
AWS リージョンを選ぶ時に気をつけること
リージョンを選ぶ際は、コストのみでリージョンを選ばないようにしましょう。
例えば、利用者が日本国内にも関わらず、北米や欧州のリージョンでシステムを構築してしまうと、レイテンシー(ネットワーク遅延)の影響が出てきます。地理的距離が近いほどレイテンシーの影響は少なくなりますので、システム利用者が地理的に近いリージョンを選ぶようにしましょう。また、利用したいサービスがそのリージョンで提供されているかの確認も必要です。
リージョン選択のポイントは、①利用したいサービスが使えること、②レスポンスが良いこと、③コストが適切であることです。
利用者が全世界に想定される場合には、エッジロケーションやCDNを活用します。これらはWebアクセスを中継し高速化する機能を持ちますので、レスポンスの向上を図ることができます。この場合は、開発者が住む地域のリージョンを選択すると良いでしょう。
リージョンとエッジロケーションの違いは?
AWSには、リージョンとは別に「エッジロケーション」という拠点があります。リージョンとエッジロケーションは、どう異なるのでしょう?
エッジロケーションは、リージョンやアベイラビリティゾーンよりも「利用者に近い場所」でサービスを提供するための設備・拠点です。エッジロケーションは世界中の都市に分散配置されており、主にコンテンツデリバリーネットワーク(CDN)サービスのAmazon CloudFrontなどのAWSサービスに使われます。
コンテンツ配信やWebサイトが大規模になってくると、AWSサービスへのアクセス負荷が増大し、ネットワーク遅延が問題になってきます。また、特定のWebアプリケーションやWebサイトを狙った攻撃のリスクも増大します。そこで、エッジロケーションはこのような問題を解決するべく、リージョンやアベイラビリティゾーンよりも利用者に近い場所に設置されており、以下のようなAWSサービスが提供されています。
- AWS CloudFront:コンテンツ配信の高速化(CDN)
- AWS WAF:Webアプリケーションの保護
- AWS Shield:DDoS攻撃への対策
- Route53:DNSサービスの提供
- AWS Firewall Manager:ファイアウォールの一元管理
東京のエッジロケーションは20、大阪のエッジロケーションは7つあります(2023年8月時点)。また、エッジロケーションとリージョンの間の通信を高速化するために「リージョンエッジ別キャッシュ」という設備も存在します。日本では東京にリージョン別エッジキャッシュが存在しています。
リージョンとエッジロケーションの違いは、リージョンがEC2といったAWSサービスをホストし、データとアプリケーションを運用するための場所であるのに対し、エッジロケーションはデータ配信の速度を向上させるための地理的に分散された拠点であるという点です。
まとめ
さて、当記事では、AWS リージョンという重要な概念を紹介しました。リージョンは、特定の地理的エリア内に設置されたデータセンタークラスタを示し、それぞれが具体的な地名(例:東京リージョン)で呼ばれます。各リージョンは複数のアベイラビリティーゾーン(AZ)を含む、それぞれが独立したデータセンターです。
利用できるサービスや料金はリージョンにより違いがあります。したがって、ユーザーはシステム運用に適した地理的な位置、レスポンス速度、コスト効率、そして災害対策といった観点からリージョンを選択する必要があります。
また、AWSにはエッジロケーションという概念も存在します。これはデータセンターがユーザーに最も近い都市に位置し、データ配信速度を向上させる目的で使用されます。リージョンとエッジロケーションの主な違いは、リージョンが主にデータとアプリケーションの運用に使われるのに対し、エッジロケーションはデータの配信速度を向上させるために使用されます。
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参考文献
- AWS、AWS グローバルインフラストラクチャ、2024年1月5日アクセス
- AWS、AWS サービス (リージョン別)、2024年1月5日アクセス