AWSノウハウ
AWSのマネージドサービスとは?
知らないと損をする基礎知識と活用のポイント
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目次
AWSをはじめとするクラウドサービスの利用が広まるにつれて、「マネージドサービス」という言葉がよく聞かれるようになりました。しかし、AWSに関連するマネージドサービスには複数の意味があります。AWSを利用するうえでも、それぞれの違いを理解しておくことが役立つでしょう。
この記事では、AWSにおけるマネージドサービスの種類と特徴・機能に加え、利用するメリットや活用のポイントも解説します。
マネージドサービスとは
マネージドサービスとは、サーバー運用やソフトウェア管理、セキュリティなどのIT環境にかかわる業務を外部に委託できるサービスのことです。
近年、IT人材の不足に伴い、高度な知識やスキルを持つ要員の確保が難しくなっています。こうした背景から、専門性の高い分野を外部の専門家に委託するマネージドサービスの利用が一般的になりつつあります。マネージドサービスを活用することで、企業はIT運用にかかる手間や時間を削減し、コア業務に集中することが可能です。
マネージドサービスの中でもPAAS、SAASは従来より需要が高まっていましたが、近年特にAMSやMSPの需要も高まっています。この背景には、複数の要因があります。
- 1.クラウドへの移行
- まず、クラウドへの移行が加速している点が挙げられるでしょう。クラウドではハードウェアの調達や管理から解放される一方、専門的な知識やスキルが必要とされます。しかし、多くの企業がシステムの複雑化や、IT人材の不足といった問題に直面しています。
- 2.DXを推進したい企業の増加
- また、デジタルトランスフォーメーション(DX)を推進する企業も増えてきました。多くの企業にとって、システム運用の負担をいかにして軽減するかが、喫緊の課題の一つです。
- 3.セキュリティの重要性が増加
- 加えて、セキュリティの重要性も増しています。専門家による24時間365日の監視や、最新のセキュリティ技術の導入により、情報漏洩などのリスクに備えなければなりません。
マネージドサービスは、これらの要求に応えるのに効果的なソリューションです。技術の進歩や経営環境の変化に適応するために、企業のIT戦略に不可欠な要素の一つだといえるでしょう。
AWSのマネージドサービスには3種類の意味がある
マネージドサービスは、IT環境を運用する手間を軽減するための一つの選択肢です。AWSにおいて「マネージドサービス」という言葉を使うときは、以下の3つの意味があります。
- Amazonが提供するPaaS/SaaS
- AWS Managed Service(AMS)
- サードパーティのAWS運用サービス(MSP)
ここでは、はじめにマネージドサービスの概要を確認したうえで、AWSにおける3種類のマネージドサービスについてそれぞれ説明します。
種類1:Amazonが提供するPaaS/SaaS
AWSにおけるマネージドサービスの1つ目の意味は、Amazonが提供するAWSのサービス群です。一般的には「PaaS(Platform as a Service)」や「SaaS(Software as a Service)」として知られている、以下のようなサービスが該当します。
- Amazon RDS(Relational Database Service)
- Amazon EC2(Elastic Computing Cloud)
- Amazon Route 53
これらのサービスは、一つひとつがマネージドサービスの特徴を備えています。インフラやOS・ミドルウェアの管理をAWSに任せることで、ユーザーはアプリケーションの開発・運用に専念できるため、生産性の向上が期待できます。
種類2:AWS Managed Services(AMS)
2つ目の意味は、Amazonが提供する「AWS Managed Services(AMS)」という名前の代行サービスです。例えば、以下のようなサポートを行ないます。
- AWSを大規模に採用した環境の設計・構築・移行・運用
- 24時間365日の監視
- 障害対応やセキュリティリスクの軽減
- コンプライアンスへの準拠
- コストの最適化
ユーザーは必要な範囲のみを委託できるため、柔軟な運用が可能です。AMSを利用すれば、企業は社内のIT人材をイノベーションに集中させられます。
種類3:サードパーティのAWS運用サービス(MSP)
3つ目の意味は、Amazonが認定する「MSP(Managed Service Provider)」です。MSPはAmazonの公式パートナーとして、AMSよりも幅広い支援を提供しています。具体的には、以下のような依頼も可能です。
- アプリケーション開発
- マルチクラウド環境の運用・管理
MSPでは、AWSの専門知識を持つ外部の人材により、自社の要件に合わせてカスタマイズされたサービスを受けられます。ビジネス戦略に基づいて、AWS以外のクラウドサービスも活用したマルチクラウド環境の提案も受けられる点は、AMSとは異なる魅力です。
なお、以降はマネージドサービスの特にAMS,MSPに絞って解説を進めていきます。
AWSマネージドサービス(AMS)の特徴
AWSのマネージドサービス(AMS)の主要な特徴について、簡単にまとめて解説します。
24時間365日のサービス復元とインシデント対応 | 24時間365日体制で監視し、異常検出時に自動対応を実施。インシデントの予防と早期解消 |
---|---|
自動バックアップサービス | データの自動バックアップ、バックアップデータからのリストア作業の代行 |
自動パッチ適用サービス | OSやミドルウェアのパッチ適用作業を自動化し、動作確認とロールバックも対応 |
セキュリティ対応の充実 | セキュリティグループやIAMポリシー設定、GuardDutyやSecurity Hubによるリアルタイム監視 |
24時間365日のサービス復元とインシデント対応
インシデントの多くは、AMSにより未然に防げます。ユーザーのAWS環境を24時間365日体制で監視し、インシデントにつながる異常や障害を検出した場合は、自動的に問題を解消するためです。
これにより、企業はサービスの予期せぬ中断を最小限に抑えられるでしょう。
自動バックアップサービス
AMSは、ユーザーのデータを定期的に自動バックアップする機能を提供します。データが損失した場合は、AMSがバックアップデータからのリストア作業を代行します。
このサービスを活用することでデータの安全性が向上し、災害発生のような万が一の際にも、復旧がスムーズになるでしょう。
自動パッチ適用サービス
システムのセキュリティを維持するためには、パッチのタイムリーな適用が不可欠です。AMSは、その際の煩雑な作業を自動化し、ユーザーに代わって実行します。これにより、OSやミドルウェアの脆弱性について、適切なタイミングでの対処が可能です。
このサービスには、パッチ適用後の動作確認も含まれます。問題が発生した場合は、バックアップした時点まで速やかにロールバックする仕組みです。
セキュリティ対応の充実
AMSは、AWSのベストプラクティスとセキュリティツールを活用し、予防的・検出的なセキュリティを提供します。
予防的コントロールとしては、セキュリティグループの適切な設定やIAMポリシーの管理により、不正アクセスのリスク低減が可能です。検出的コントロールでは、Amazon GuardDutyやAWS Security Hubなどのサービスを活用し、セキュリティ上の脅威をリアルタイムで監視します。
AWSのマネージドサービス(MSP)の特徴
AWSのマネージドサービス(MSP)の具体的なサービス内容は、提供元の企業によって異なります。ここでは、主要な特徴について簡単に説明します。
初期AWS環境の構築 | AWS環境の設計・構築、セキュリティ設定、コスト最適化 |
---|---|
個別サービスの新規作成 | 各種AWSサービスのセットアップ、連携、カスタマイズ |
バックアップ・リストア 作業の代行 |
バックアップ戦略の立案・実行、リストア作業の代行 |
AWSサポートへの 問い合わせ代行 |
AWSサポートへの問い合わせ・申請代行、トラブルシューティング |
システム監視と レポーティング |
システムの監視、パフォーマンス可視化、レポーティング |
初期AWS環境の構築
MSPでは、ユーザーのビジネスニーズに合うAWS環境の設計・構築が可能です。具体的には、プラットフォームの選定や移行プランの作成などを行ないます。
サービス内容によっては、初期のAWS環境のセットアップまで実施してくれる場合もあるでしょう。これには、セキュリティグループの設定やIAMポリシーの構成による基本的なセキュリティ、コスト最適化を考慮したアーキテクチャによる無駄のない環境の実現といったことも含まれます。
個別サービスの新規作成
MSPは、システムに必要となる個別のAWSサービスの新規作成も代行します。具体的には、EC2インスタンスの立ち上げやRDSデータベースの設定などです。
こうしたサービスにより、ユーザーがAWSをスムーズに利用開始できるようにサポートします。また、ユーザーのニーズに合わせて、サービス間の連携やセキュリティ強化のためのカスタマイズも実施します。
バックアップ・リストア作業の代行
MSPは、定期的なバックアップを実施してユーザーのデータを保護します。これには、さまざまなAWSサービスに対応した、バックアップ戦略の立案と実行が含まれます。
具体的には、EC2インスタンスのスナップショット作成のほか、RDSデータベースやS3バケットの複製などです。また、必要に応じてリストア作業も代行します。障害発生時のダウンタイムを最小限に抑えるためにも、重要なサービスだといえるでしょう。
AWSサポートへの問い合わせ代行
AWSのサポートへの問い合わせや、サービスリクエストの申請なども、MSPが代行できます。
ユーザーが直接AWSの担当者と対話しようとすると、かえって時間がかかってしまうこともあるかもしれません。AWSの専門知識を持つMSPのスタッフであれば、技術的なコミュニケーションも適切に行なえます。これにより、問題解決の迅速化が期待できます。
システム監視とレポーティング
MSPは、ユーザーのAWS環境を24時間365日体制で監視し、そのパフォーマンスや稼働状況などを可視化します。また、稼働や障害発生の状況を、月次レポートなどで定期的にフィードバックします。
サービス内容によっては、より安定した稼働のための改善や最適化を提案してくれる場合もあるでしょう。
AWSのマネージドサービス(AMS、MSP)を利用するメリット
ここでは、AMSやMSPの主要なメリットを説明します。
運用の効率化
AWSのマネージドサービスを利用することで、企業のIT運用を効率化できる可能性があります。
例えば、定期的なバックアップの自動化が可能です。利用するサービスによっては、24時間365日のサービス監視とインシデント対応のほか、月次レポートの作成やパッチの自動的な適用も行なえます。
こうした多岐にわたるタスクのアウトソーシングにより、社内の運用工数は大幅に削減されるでしょう。
セキュリティレベルの向上
企業のセキュリティレベルは、マネージドサービスにより向上する可能性があります。AWSの専門知識を持つスタッフが、予防と検出の両面からセキュリティに携わるためです。
例えば、予防的なセキュリティコントロールとして、適切なアクセス制御やネットワーク設定のチェックなどが行なわれます。検出的なコントロールとしては、異常検知や脆弱性スキャンなどが実施されるでしょう。
こうした取り組みにより、継続的なリスクの軽減とセキュリティの強化が期待できます。
コストの最適化
AWSのマネージドサービスでは、専門家のスキルと経験に基づくベストプラクティスの提供を受けることも可能です。これにより、不要なリソースが削減され、コストを最適化できる可能性があります。
また、マネージドサービスはアウトソーシングであるため、人的リソースの有効活用にも効果的です。社内の貴重なIT人材を運用からコア業務にシフトさせ、より多くの価値を生み出せるようになるでしょう。
ITインフラ運用負担の軽減
AMSやMSPを活用すれば、監視やバックアップ、パッチ適用などの日常的な業務の代行を依頼できます。これにより、社内のIT部門はより生産的な活動に注力できるようになります。
例えば、デジタルトランスフォーメーションによる新しいビジネスモデルの創出のような、ビジネスに直結する活動にも力を入れられるでしょう。
AWSのスキル・ノウハウ不足の解消
社内でAWSのスキルやノウハウが少ない場合でも、MSPを利用すれば高度なクラウド環境を構築・運用できます。専門知識を持つスタッフが、設計から運用まで一貫してサポートしてくれるためです。
その際、AWSの複雑な機能や最新のサービスも、必要に応じて効果的に活用できるでしょう。企業は自社のコア業務に集中しながら、安心してAWSを利用できます。
無駄のないITリソースの活用
マネージドサービスを活用すれば、リソースの利用状況を可視化できます。これにより、不必要なリソースがあることに気付く場合もあるでしょう。
こうしたリソースを削減することで、無駄のないITリソースの活用が可能となります。
AWSのマネージドサービス(AMS,MSP)活用のポイント
ここでは、マネージドサービスのメリットを最大限に引き出すためのポイントを説明します。特に、最も対応範囲が広いMSPでは、ポイントを押さえた活用が重要です。
AWSの導入検討段階から活用を検討する
システム開発にAWSを用いると決めた段階から、AMSやMSPの利用についても検討しましょう。これらは、AWSの導入による効果を最大化するための選択肢です。
例えば、より効率的なシステム構築のために、設計フェーズからMSPを利用することが考えられます。早期から活用できれば、長期的な運用コストの削減や、スケーラビリティの向上などが見込めます。
自社に不足しているスキルを見極める
効果的にAWSを活用するには、どのようなスキルが自社に不足しているのかを客観的に評価することが重要です。
例えば、AWSの専門知識が足りない場合は、AMSの利用によってカバーできます。それでも不安がある場合は、MSPを検討しましょう。自社に足りないスキルをサードパーティで補完することで、円滑なクラウド活用を実現できます。
サービスレベルと役割分担を明確化する
マネージドサービスを利用する際には、サービスとユーザーとの間の責任範囲を明確に理解することが重要です。この責任の境界線は「責任共有モデル」と呼ばれ、サービスごとに異なります。
例えば、Amazon EC2ではインフラはAWSが管理しますが、OSやアプリケーションについてはユーザーの責任です。Amazon RDSの場合は、データベースエンジンの管理もAWSが行ないます。
MSPとの契約時には、サービス内容と併せて役割分担を確認し、運用における両者の責任範囲を明確に定義しましょう。
信頼できるAWSパートナーを選定する
クラウドシステムの構築では、信頼できる業者を選定することが重要です。Amazonが認定したMSPであれば、専門的な知見や豊富な実績があり、信頼性については申し分ありません。サービス内容によっては、24時間365日の監視や障害対応、コストの最適化なども実現できるでしょう。
AWSの活用をうたう業者は多数ありますが、ビジネスの成長を支える強固なシステムを実現するためには、MSPを選ぶのがおすすめです。
AWSのマネージドサービスの料金体系
AWSのマネージドサービスは、種類によって料金体系が異なります。
AMSは従量課金制です。インスタンス数や、各種AWSサービスの利用料に基づいて料金が算出されます。
MSPが提供するサービスには、従量課金制だけでなく固定料金制などの選択肢もあります。自社のニーズや予算に合わせて、最適なサービスを選びましょう。
AWSパートナーとの連携について
AMSは、おもにインフラの管理と自動化によるスケーリングに重点を置いています。これに対して、MSPであればアプリケーションとインフラの両方を管理できます。
また、AWSは自身のソリューションのみでは対応できない領域を埋めるために、認定パートナーであるMSPと密接に連携しています。アプリケーションも含めた対応が必要な場合は、MSPの利用を検討しましょう。
アプリケーション管理サービスの有無について
AMSの対象範囲はあくまでインフラやミドルウェアまでであり、アプリケーションについてはユーザー側の責任です。アプリケーションの開発や最適化、管理・運用などを含めたサービスが必要な場合は、MSPの活用を検討しましょう。
詳細なサービス内容は提供元によって異なりますが、MSPであればインフラからアプリケーションまで包括的に対応できます。独自のアプリケーションを必要とする企業にとって、有益なオプションとなるでしょう。
マネージドサービスとフルマネージドサービスの違い
より広範囲のアウトソーシングが可能なサービスは、マネージドサービスと区別して「フルマネージドサービス」と呼ばれます。AWSのサービスは原則としてマネージドサービスですが、Amazon RDS on OutpostsやAmazon DynamoDBなどは、フルマネージドサービスとして提供されています。
なお、インフラだけでなく、アプリケーションの管理までを含めて委託できるサービスをフルマネージドサービスと呼ぶこともあります。
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まとめ
IT運用の効率化には、マネージドサービスが有効です。AWSにおけるマネージドサービスはPaaS/SaaSと呼ばれるものが基本ですが、ニーズに合わせてAMSやMSPの利用も検討するとよいでしょう。これらは、インフラの管理に加えて自動バックアップやコストの最適化、セキュリティの向上などにも対応できるサービスです。
アプリケーションも含む幅広い機能が必要な場合は、MSPを活用するのがおすすめです。自社に適したマネージドサービスでIT運用の負担を軽減すれば、コア業務に集中しやすくなるでしょう。ビジネスの成長や競争力の強化につなげるためにも、マネージドサービスを活用してはいかがでしょうか。
GMOグローバルサイン・ホールディングス株式会社が運営するCloudCREW byGMOでご紹介する記事は、AWSなど主要クラウドの認定資格を有するエンジニアによって監修されています。