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AWSノウハウ

AWS Backupとは?
クラウド環境を守るバックアップ戦略の基礎からベストプラクティスまで

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目次

近年、クラウドインフラストラクチャはより複雑さを増しているなか、効果的なデータ保護戦略が重要視されています。そのような環境で効果的なサービスが「AWS Backup」です。AWS Backupを活用することにより、クラウド環境におけるバックアップ作業を簡素化し、セキュリティ向上とコスト削減の両立が可能となります。

この記事では、AWS Backupの概要から主要な機能、ベストプラクティスにいたるまでわかりやすく解説します。

AWS Backupとは

AWS Backupは、複雑なAWSサービス全体のバックアップを一元化・自動化するサービスです。ここでは、AWS Backupの概要や特徴、従来のバックアップ方法との違いについて解説します。

AWS Backupの基本概念

AWS Backupは、AWSのクラウド環境に加え、オンプレミス環境におけるデータも一元管理でバックアップ可能なフルマネージドサービスです。多くの企業において、システム担当者は複雑なバックアップ管理の課題に直面していますが、その課題に対しシンプルかつ効率的な解決を目的としています。

AWS Backupは、複数のAWSリソースに対して一元化されたバックアップ機能を提供しています。このサービスを活用することにより、担当者は手動でのバックアップや、個別のスクリプト作成といった煩雑さから解放されるでしょう。AWS Backupにより、効率的なバックアップ運用が可能となります。

AWS Backupの特徴

AWS Backupは、多様なAWSリソース全体のバックアップを一元管理可能な点が特徴です。バックアップコンソール、バックアップAPI、AWS CLIを通じて、EC2インスタンス、DynamoDBテーブル、EFSファイルシステムなど、豊富なAWSリソースのバックアップを簡単に管理し、アクティビティを監視することができます。

システム管理者は、複雑な設定や個別の対応に悩むことなく、一元的なデータ保護戦略を容易に実現することが可能です。

従来のバックアップ方法との違い

従来のバックアップ方法と比較して、AWS Backupはバックアッププロセスの実行が完全に自動化されている点が大きな違いです。手動でのバックアップ設定や個別のタスク管理は不要です。管理コンソール上での簡単な操作によってバックアップのスケジュールやポリシーを容易に設定できます。

バックアップ運用自体は直接的な利益を生み出すものではありませんが、システムを維持するためには欠かせません。これまではバックアップを適切に運用するために多くの時間とリソースが必要でした。しかし、AWS Backupにより自動化されたバックアッププロセスにより、システム管理者は本来の業務にリソースを集中できるようになります。

AWS Backupのメリット

AWS Backupの活用にはさまざまなメリットがあります。ここでは、おもな6つのメリットについてそれぞれ解説します。

バックアップの一元管理

AWS Backupは、EC2、S3、EFS、RDS、DynamoDBなど、多様なAWSリソースのバックアップを単一の管理コンソールから一元管理できます。これまではリソースごとに行なわれていた各サービスのバックアップを一元的に管理することにより、バックアップ作業の複雑さが解消されます。それにより、管理工数を効果的に削減できるため、システム管理者の作業負担は大幅に軽減されるでしょう。

コストの最適化

AWS Backupは、実際に使用したストレージ容量に応じて課金される従量課金制のため、無駄なコストを抑制できます。増分バックアップ機能によって変更されたデータのみをバックアップできるため、ストレージコストを最小限に抑えることが可能です。企業のIT予算を適切に管理しながら、効率的にデータ保護戦略を実現できます。

運用効率の向上

設定したバックアップスケジュールやポリシーに基づいて自動的にバックアップされるため、システム担当者の運用負荷が軽減されます。従来の手動によるバックアップ作業とは異なり、管理コンソールから直感的な操作によって簡単にバックアップを設定できるため、担当者の業務効率も大幅に改善します。

複数のAWSリソースに対しても、一度の設定により自動的にバックアップが実行されるため、個別のスクリプト作成や手動での管理は不要です。また、これらの施策により貴重な人的リソースを本来の戦略的な業務に集中させることができる点も、大きなメリットの一つといえます。

セキュリティとコンプライアンスの強化

AWS Backupは、バックアップデータを高度な暗号化技術によって保護し、セキュリティを強化しています。AWS Key Management Service(KMS)を利用した業界標準の暗号化アルゴリズムを使用し、保存中および転送中のデータを安全に保護します。

さらに、AWS Identity and Access Management(IAM)と連携してアクセス制御を適切に設定可能です。バックアップデータへのアクセス権限を細かく制御できるため、不正アクセスのリスクを最小限に抑えられます。これらのサービスを活用することにより、自社の具体的な要件に基づいたバックアップポリシーの設定が可能となり、コンプライアンス対応の強化につながります。

柔軟なバックアップポリシー設定

日次、週次、月次など、異なる頻度でバックアップを実行することが可能なため、各リソースの特性や重要度に応じてカスタマイズすることができます。AWSタグを活用することにより、設定したタグの条件に合致したリソースに対して自動的にバックアップポリシーを適用できるため、きめ細かいバックアップ管理が可能です。システム担当者は組織の要件に合わせて、柔軟で効率的なバックアップルールを設定できます。

災害復旧能力の向上

クロスリージョンバックアップ機能により、異なるAWSリージョン間でデータの冗長性を確保し、災害復旧能力を大幅に向上させることが可能です。この機能を使うことにより、リージョン内での障害発生時には、別のリージョンに保存されたバックアップデータを使用して迅速に復旧できます。そのため、災害やネットワークの障害など、リージョン全体が影響を受ける場合に対する耐性を高めることが可能です。これらの冗長化施策により、事業継続性が強化されます。

AWS Backupの主要機能と仕組み

ここでは、AWS Backupを利用するうえであらかじめ知っておくべき主要機能とその仕組みについて、簡単に解説します。

バックアップボールトの作成

バックアップボールトは、AWS Backupにおいてバックアップデータを保管・管理する論理的なコンテナです。ボールト(vault)は金庫室、貯蔵室などを意味する言葉です。このバックアップボールトは、指定されたAWSリソースのバックアップを一元的に管理・保護するための重要な基盤です。システム担当者は、このボールトに異なるリソースのバックアップデータを効率的に格納することによって、セキュリティと可用性を確保できます。

バックアッププランの設定

バックアッププランは、組織のデータ保護要件に応じた設定が可能です。システム担当者は、バックアップの頻度、保持期間、バックアップ先などを詳細に定義することが可能で、各リソースの特性や重要度に合わせてきめ細かなカスタマイズができます。

自動バックアップスケジューリング

AWS Backupは、事前に設定されたバックアッププランに基づいて、自動的にバックアップを実行します。管理者の手動操作を最小限に抑えながら、一貫したデータ保護戦略を実現できるため、データの運用効率を大幅に向上させることができます。

増分バックアップ

AWS Backupでは、最初に完全バックアップを行ない、それ以降は変更されたデータのみをバックアップする「増分バックアップ方式」を採用しています。変更された部分のみを対象とするため、バックアップ時間とストレージ使用量を大幅に削減することが可能です。

クロスリージョンバックアップ

クロスリージョンバックアップは、異なるAWSリージョン間でバックアップをコピーする機能です。地理的に離れた場所へ分散してバックアップを行なうことができるため、事業継続計画(BCP)やコンプライアンス要件への対策として有効活用できます。

アカウント間バックアップ

AWS Backupでは、同一のAWS Organizationsに属する複数のAWSアカウント間でバックアップをコピーし管理・共有する機能を提供しています。この機能により、組織全体でデータ保護ポリシーを一元管理することができるようになり、大規模な企業環境でも柔軟な対応が可能です。

バックアップ監査とモニタリング

バックアップタスクの状態、履歴、結果を監査し証跡を残すための包括的なダッシュボードサービスであるAWS Backup Audit Managerを利用できます。このサービスにより、全体のバックアップ状況をレポートにまとめるほか、プランに準拠していない動きを監査することが可能です。

暗号化とセキュリティ機能

AWS Key Management Service(KMS)を使用した強力な暗号化機能により、バックアップデータを保護します。ユーザーが作成した暗号化キーによってデータを暗号化し、データの機密性と整合性を確保します。

AWS Backupで対応できるリソース

AWS BackupではAWSリソース全体のバックアップに加え、オンプレミス環境のデータもバックアップが可能です。ここでは、おもにAWS Backupで対応可能なAWSリソースについて解説します。

コンピューティングリソース

Amazon EC2インスタンスをはじめとするコンピューティングリソースのバックアップは、システム担当者にとって最も重要な機能の一つです。AWS Backupを使用することにより、EC2インスタンスのルートボリュームや関連するEBSボリュームのスナップショット(ある瞬間における、前期内保存したデータからの増分バックアップ)を取得できます。インスタンスの設定パラメータも同時にAMI(Amazonマシンイメージ)として保存できるため、障害発生時には迅速に復旧することが可能です。

ストレージリソース

Amazon S3、Amazon EBSなどのストレージリソースに対して、AWS Backupによる高度なバックアップが可能です。具体的には、データの増分バックアップ、強力なデータ暗号化、クロスリージョンバックアップなどの機能が挙げられます。これらの機能により、ストレージデータを保護し、可用性を確実に保持できます。

データベースリソース

Amazon RDS、DynamoDB、Aurora、DocumentDBなど、多様なデータベースリソースのバックアップもサポートしています。自動バックアップスケジュール、データ暗号化、クロスリージョンコピーなどの高度な機能により、データベースの可用性と信頼性を大幅に向上させることが可能です。複雑なデータベース環境においても、一貫性のあるバックアップ戦略が実現できます。

ファイルシステムリソース

Amazon EFS、FSx for Windows、FSx for Lustreなどといったファイルシステムリソースに対するバックアップもサポートしています。自動バックアップスケジュール、増分バックアップ、項目レベルの復元機能により、ファイルシステムデータを保護し、高可用性を実現します。

ハイブリッドクラウドリソース

オンプレミスのVMware仮想マシンやVMware Cloud on AWSのバックアップもサポートしています。Backup Gatewayを介することにより、クラウドとオンプレミス環境間でのシームレスなデータバックアップが可能です。オンプレミスとクラウド間での一貫したバックアップ環境の構築が可能となり、システム担当者の運用負担が大幅に軽減されるでしょう。

特殊なリソース

SAP HANAやAWS Storage Gatewayなど、AWS Backupは特殊なリソースのバックアップにも対応しています。AWS Backint Agentと連携してSAP HANAをバックアップするほか、オンプレミス環境とAWSストレージを接続するStorage Gatewayのバックアップなど、幅広いユースケースに対応可能です。高度な技術要件を持つ特殊なシステムにおいても、信頼性の高いデータ保護が実現されます。

AWS Backupのベストプラクティス

効果的に重要なデータを保護するためには、AWS Backupの機能を最大限に活用することが重要です。ここでは、組織のニーズに合わせた最適な運用方法について解説します。

適切なバックアップ戦略の設計

組織の重要なデータを保護するためには、徹底的な業務要件の分析が不可欠です。リソースの重要度、復旧計画、コンプライアンス要件について明確に定義し、これらに基づいたバックアップ戦略を設計することが重要となります。

また、効果的なデータ保護を実現するために、リソースタイプに応じて適切なバックアップ頻度とライフサイクルポリシーを策定することも重要です。システム担当者は、各リソースの特性と重要性について慎重に評価し、最適なバックアップアプローチを選択する必要があります。

リソースの包括的な保護

包括的なデータ保護戦略では、AWS環境内のすべての重要なリソースをAWS Organizationsを活用するなどによって、網羅的にバックアップ対象に含めることが基本です。AWSタグを活用することにより、AWSリソースを自動的に識別し、効率的に保護することができます。

また、意図せぬデータ損失のリスクを最小限に抑えることも可能です。包括的なデータ保護戦略を実現することで、システム担当者はAWS環境全体のデータ保護を一元的に管理できます。

バックアップポリシーの定期的な見直し

ビジネス環境は常に変化していくため、バックアップポリシーの作成後には、定期的に見直すことが推奨されます。組織の成長や新たなコンプライアンス要件、技術の進化などに合わせて、バックアップ戦略を継続的に最適化していく必要があります。そのためには、バックアップポリシーを定期的に評価し、調整することが重要です。システム担当者は、定期的にレビューを行なって、常に最新かつ最適なバックアップ戦略を維持することが求められます。

復旧テストの実施

バックアップは取得したら終わり、というわけではなく、バックアップから元のデータを戻せなければ意味がありません。また、データの復旧・復元に要する時間も把握しておく必要があります。

AWS Backupの復元テスト機能を活用すれば、復元ジョブの所要時間を正確にモニタリングできます。実際の障害発生時に備えて、復旧プロセスに対する信頼性について事前に確認しておくことが重要です。定期的に復旧テストを実施することにより、システム担当者は迅速かつ確実な復旧対応能力を維持できます。

コスト管理と最適化

AWS Backupを活用するうえで、コストの管理と最適化については常に意識することが重要です。増分バックアップとフルバックアップの適切な活用、最適な保持期間の設定、不要なバックアップの削除などにより、バックアップストレージコストを最適化できます。

使用状況について継続的にモニタリングし、効率的なリソース活用を図ることが重要です。システム担当者は、コスト効率と十分なデータ保護のバランスについて入念に検討する必要があります。

セキュリティ設定の強化

バックアップデータには重要なデータが含まれることが多いため、バックアップデータのセキュリティを強化することも不可欠です。

AWS Backupでは、バックアップボールトのロックや暗号化、きめ細かいアクセス制御などによって、さらなるセキュリティの強化が可能です。機密データを保護し、不正アクセスに対するリスクを最小限に抑えることが、セキュアなバックアップ戦略の重要な要素となります。

モニタリングとアラート設定

AWS Backupでは自動的にバックアップが進められますが、バックアッププロセスの状態は常にチェックしましょう。Amazon CloudWatchやAmazon EventBridgeを使用してバックアップジョブの状態を継続的にモニタリングすることが重要です。継続的なモニタリングにより、障害や異常を早期に検出することが可能です。

併せて、適切なアラート通知設定におって、潜在的な問題に対する迅速な解決につながります。システム担当者はこれらの包括的なモニタリング戦略を通じて、AWS環境の安定性と信頼性を確保できます。

監視・運用保守、障害時の緊急対応までワンストップで対応する「マネージドクラウド」

AWSを利用するうえで、AWS Backupによるバックアップ戦略は非常に重要です。AWS Backupを活用し、自社に適したバックアップ戦略を実現するためには、AWS Backupを含めたAWSやクラウドに関する知識が欠かせません。しかし、クラウドに関する知見はオンプレミスとは異なるため、自社に適した人材が不足している、という場合も多いのではないでしょうか。

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まとめ

AWS Backupは、AWSクラウド環境のバックアップ戦略を解決するサービスです。AWS Backupを活用することによってバックアッププロセスの自動化を実現し、システム担当者の負担を大幅に軽減できます。バックアップの一元管理・コスト管理でもメリットがあるため、AWSを活用するうえでは欠かせないサービスの一つといえるでしょう。

この記事では、AWS Backupを利用するうえで最低限理解しておくべき特徴や主要な機能、対応するリソースなどについて解説しました。AWS Backupのベストプラクティスと併せて、本記事を参考にAWS環境におけるバックアップ戦略について検討してみてはいかがでしょうか。

CloudCREW
当記事の監修

GMOグローバルサイン・ホールディングス株式会社が運営するCloudCREW byGMOでご紹介する記事は、AWSなど主要クラウドの認定資格を有するエンジニアによって監修されています。

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